東日本大震災から10年共に

追悼式典日米結ぶ
私たちNYは忘れない

TOGETHER FOR 3.11

 第10回トゥギャザー・フォー・3・11東日本大震災追悼式典が3月6日午後8時からオンラインストリーミングで開催された。約700人がライブで参加し、現在も3000ビューを超す勢いで更新中だ。

 主催したフェローシップ・フォー・ジャパン=写真上=トゥギャザー・フォー・3・11代表のAKさんが10年間、岩手、宮城、福島の現地からの生の声「忘れないで欲しい」に応え「一緒に前に進んでいきましょう」と挨拶した。

 ニューヨーク総領事の山野内勘二大使は「10年経った現在も避難者4万1781人が故郷に戻れないままでいる。3・11の悲劇を風化させず、次の世代に伝えて行かなくてはならない」と話した。

 宮城県石巻市・日和幼稚園遺族有志の会の佐藤美香さんは、通園バスで非難途中に津波にさらわれ、変わり果てた姿の娘を見つけた時の体験を語り、今後の防災のあり方を考えるきっかけにしてほしいと話した。

 ジャパン・ソサエティー理事長のジョシュア・ウォーカー氏は米軍のトモダチ作戦、ジャパンソサエテティーが1410万ドルを寄付し、過去10年の復興支援に使ったことを伝えた。そのあと、ニューヨークの風の環少年少女合唱団が「ありがとうの歌」を披露した。

 福島市在住の絵本作家で画家のあきばたまみさんは、牛2500頭が餓死した当時の被災状況を報告し「全ての生き物の尊厳を考えるきっかけにして」と訴えた。また岩手県釜石市宝来館・女将の岩崎昭子さんは「廃炉まで40年かかると言われる中で10年が過ぎた。30年後に故郷が蘇るよう今は耐えて子供たちに明るい未来が来る日本でまたお会いしましょう」と笑顔で話した。最後に福島県相馬市みなと保育園の園児たちが「10年間見守ってくれてありがとう」と感謝の言葉を述べ「いつの日か夢はかなう」と合唱した。

故郷を思う県人
復興に安堵と祈り

ほくほく会

 ニューヨークとその近郊に暮らす東北6県と北海道出身者によって構成される連合会「ほくほく会」は7日午後1時30分から第10回3・11追悼式をZOOMで行った。この追悼式は2011年の震災直後から現在まで、各県がそれぞれ幹事県となり、犠牲者への哀悼の意を表し、災害風化の防止、故郷の現状理解を深めるため、毎年休まず開催している。今年度の幹事県は北海道と福島県が務めた。ニューヨーク福島県人会の竹田小夜子会長が開会の挨拶をした。

 式典は例年通り2部構成で行われ、第1部ではニューヨーク総領事の山野内勘二大使の挨拶、県人会からの被災地報告、読経と黙祷。第2部ではほくほく会ゆかりの合唱団「JCH・とも」の歌と「民舞座」による東北の踊りを披露した。式典の後、引き続きオンラインでの懇親会があった。

 挨拶で山野内大使は「未曾有の大震災から10年、犠牲者の冥福をお祈りすると共に、1月13日現在4万1781人が故郷に帰れない状態が続いている。住民の心の復興が大切で、ニューヨークの日本コミュニティーが、ほくほく会はじめさまざまな団体が募金活動や交流活動をして支援し、それは今なお続いている。人と人との繋がりが乗り越えていく鍵になる。現在コロナ禍と闘っているが、震災も的確に対応することでその記憶と記録を次の世代に伝えていくことが非常に大事だ」と述べた。

 北東アメリカ兵庫県人会会長のジョシュ大西さんは「阪神淡路大震災で復興の努力と同時に防災の努力も大切と学んだ。追悼式典を続けて参加することで風化させないことが大切だ」と述べた。

 被災地からのレポートとして3県から報告があった。福島県を代表して国連職員の高田実さんがSDGsを使った福島の未来について語った。「ジェンダーの平等、気候変動、クリーンエネルギー、平和と公正などの目標で福島が日本一になるよう努力している」などと述べた。

 宮城県名取市議会議員の荒川洋平さん(39)は5万5000人いた住民の中で750人が犠牲となった閖上(ゆりあげ)地区の10年を語った。母親と弟を瓦礫の中で探し続ける日々は、見つかるのも嫌だし、見つからないのも辛い。二人の遺体は今も見つからないままだ。自分が育った故郷を復興することに人生を捧げる覚悟をして街づくりに取り組んできた。人口はまだ2000人を切っているが、施設ができて人を呼ぶことができるような街になった。交流人口の拡大が生き残っていく道だと思う。ハードの復興は昨年3月に復興達成宣言ができたが、生活に直結した悩みがあり、それはある意味で被災地以外と同じレベルになってきた証ではないか。しかし今でも父親も自分も夜中に1週間に1度はうなされる。ニューヨークからの応援を心から感謝している」と述べた。

 岩手県からは釜石市の NPO法人アラマキ副代表の吉野和也さんが現状を報告した。現在は仮設住宅もなくなり防潮堤もでき、綺麗な街になり前を向けるようになった人も多くなった一方、被災地でこれからというときにコロナ禍となり、飲食店などと取引している海産物業者は大きな打撃を受けている。個人を相手にした通販は伸びているようだと述べた。岩手県の感染者数は県全体で150人、釜石市で数人と極めて少ないため、どこで感染してもおかしくない東京などの大都市と違い、感染リスクが低い分、危機感は非常に高い。先祖代々暮らしている古い家で、もし感染者が出たら街を出て引っ越さないとならない、親が死んでも帰って来るなという不安の声もあるなどと紹介した。

 NY平和ファウンデーションの中垣顕實法師が法話と読経を唱え黙祷が捧げられた。中垣法師は「人と比べる命ではなく、かけがえのない自分の命を大切にすること、一人一人が慈愛の目を持ち、人真似ではない自分の持っている色を輝かせる形で他者に尽くすことが大切だ」などと語った。

 このあと民舞座(鈴木百代表)による北海道と東北各県の盆踊りとジャパン・コーラルハーモニー「とも」混声合唱団(阿部友子団長/白田正樹音楽監督)による合唱が披露された。最後に、ほくほく会今年の追悼式典主催幹事の北海道ゆかりの会代表幹事の竹田勝男さんが「3県の被災地レポートを聞いて復興が確実に続いていることを感じた。遠くニューヨークの地から、これからも故郷への思いを届け、応援を続けていきたい」と締めくくった。