ネット投票導入へ

在外選挙で投票する有権者たち(昨年7月5日、NY日本総領事館で)

在外選挙から実施

 高市早苗総務相は1月7日、海外に住む有権者の「投票環境向上を図るのは非常に重要だ」と記者会見で述べ、在外投票へのインターネット投票導入を着実に進める考えを明らかにした。総務省はネット投票実施の前段階として、まず在外投票の実証実験実施の準備を進めている。
 在外投票は2000年に導入され、国政選挙の投票ができるようになったが、低い投票率が懸案となっている。18歳以上の在外邦人有権者は約100万人いるが、登録しているのは約10万人と10分の1程度。名簿登録者を母数とする投票率は毎回20%前後にとどまるため、事実上の投票率は2%程度となる。
 在外投票は在外公館や郵送でできるものの、投票用紙を日本に送るため投票期間が短くなることに加え、公館から離れた所に住む有権者には負担が大きい。郵便投票の煩雑さも難点で、在外選挙人名簿への登録自体が少ないままだ。2019年から転勤や留学で出国する前に市区町村の窓口で登録申請が2019年から転勤や留学で出国する前に市区町村の窓口で登録申請ができるようになるなど一部改善は図られているが、思うようには登録は増えていない。
 2018年、総務省の有識者研究会は海外居住者の低投票率解消に向けネット投票導入を提言した。マイナンバーカードを使って本人確認をすれば、パソコンなどからどこでもすぐに投票ができ、投票期間も長くできる。同時に、開票時に投票者が分からないようにする投票データの暗号化も検討されている。
 マイナンバーは一生使うものだが、海外への転出届を出すとカードが失効してしまう。このため総務省は海外でもマイナンバーカードが継続して利用できるようマイナンバー法の改正に取り組む。なお、現状ではマイナンバーを持っていない在外邦人は日本の自治体で一度住民登録をしてマイナンバーカードを入手する必要がある。
 しかし、在外投票は、日本で住民票を抜いてきた海外在住者者にのみ資格を与えているため、住民登録をしていない海外在住邦人がいかにマイナンバーを取得できるようにするかが今後カギとなる。つまりマイナンバーを持っている国内在住者がだけが継続して使えるだけの法改正では、もともとマイナンバー制度が日本でできる前から海外にいた者が置き去りにされてしまう。それでは本末転だ。きたるマイナンバー法の改正が海外在住者の現状までを考慮したものになるのか注目される。パソコンやスマートフォンからできるネット投票は投票率のが低い若者や外出が困難な高齢者らの投票行動を後押しすると期待される。総務省は早ければ今年か来年に在外投票で試し、国内でも2022年の参院選からの導入を見込んでいる。