世界の遺児に教育支援米国から

Ashinaga USA 米国代表

寺尾 のぞみさん

 病気や災害、自死(自殺)などで親を亡くした子どもたちや、障がいなどで親が働けない家庭の子どもたちを奨学金、教育支援、心のケアで支える民間非営利団体、あしなが育英会の米国法人Ashinaga USAの代表に今年8月就任した。本体となる日本のあしなが育英会を創設した玉井義臣会長(86)からの熱意あるラブコールに心を動かされた。玉井会長との出会いは、2011年の東日本大震災の直後、震災によって親を亡くした遺児たちと共に、タイムズスクエアでの街頭募金活動にボランティアとして参加したときだった。「会長の団体に対する思い、子どもたちを守ることに命を注ぎ続け、教育がいかに大切かというお話に、心を打たれ、何がしかの形でお役に立ちたいと思った」。 その後、アメリカにオフィスを構えることとなり、ボードメンバーとしてまず、Ashinaga USAの仲間に加わる機会を得て、今回の代表就任となった。

 もともと寺尾さんは自身が持つ非営利団体 MSTERIO(ミステリオ)という子どもを対象にしたバイリンガル・サマーキャンプや、世界中の子どもに手作りの人形を届ける活動を続けている。そのスローガンは 「How to make a difference」。玉井会長の理念の中に、この「Make A Difference」の精神を多く感じことも引き受けた大きな理由だった」そうだ。

 東京都出身。小学校から女子校で一貫教育を受け、高校3年の時に1年間シカゴに留学したことが人生に影響を与えた。米国大使館商務省、フジテレビ制作部、伊藤忠商事アメリカの社長秘書を経て、モルガンスタンレー証券東京支社に入社。その後、NY本社モルガンスタンレー証券会社に移籍、エグゼクテイブ・デイレクターを経て退社。モルガンスタンレー在籍中の2001年にMSTERIOを立ち上げた。

 両親と弟の四人家族で育ち、父睦夫(故人)は大手化学品メーカー、ライオンンの重役で、ビートルズ来日公演(1966年)招聘の要となったり、テレビ番組「8時だヨ!全員集合」の名付け親でもあったりとアイデアマンで行動力ある父親だった。寺尾さんの人徳はまさに父親譲りだ。

 Ashinagaでは、主にアフリカの遺児たちが米国の大学で学ぶための学業支援を行なっている。「Ashinagaはスカラーたちの命を預かっている大切な役割を果たさねばならない」という会長のメッセージを胸にコロナ後の大航海時代へと船出する。

(三浦良一記者、写真は本人提供)