米国のぬいぐるみ会社で衣装を作る

テキスタイル・デザイナー
イラストレーター

谷川 沙羅さん

   谷川沙羅さん(23)は、テキスタイルを使ったイラストレーターとデザイナー。幼い頃すべてが魔法のように感じた平和でよろこびにあふれた世界を再び体験できるような作品を制作している。目には見えない魔法の世界、それは幼かった頃の谷川さんの心を育てた大切なぬいぐるみの仲間たちとの物語だ。幼稚園や小学校時代、魔法のとびらが開いて夢の国へとつながって行き、そこでぬいぐるみの仲間たちが生きていると思っていたそうだ。

 昨年、米国の美術大学、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインのテキスタイル科を卒業。社会人1年生の現在、ブルックリンにあるオーガニックぬいぐるみ会社Hazel Villageで商品デザインに関わっている。さまざまなコレクション作りの中、主にぬいぐるみの洋服や小物のデザインを担当し、不思議さや魔法のような力といったテーマをイラストやテキスタイルで表現している。

 Hazel Villageは、人形アーティスト、ジェーン・ヴァンクリーフが創設した会社で、森の奥の村に住んでいる豊かな仲間たちの世界がテーマ。絵本に登場するする、こぐまやうさぎ、ねずみなどの小動物が主人公だ。環境と人々に優しい製作にこだわり、海外の職人とフェアトレードパートナーシップを組んで商品を世界中に発送している。

 「幼い頃からぬいぐるみがかけがえのない家族と思う私にとって、社会のために長くもちこたえられるように大切にぬいぐるみを製作している会社で働くことはとても幸せなことです。自分がデザインした洋服をぬいぐるみに試着させる時はドキドキとうれしさとがいっぱいです」と金縁眼鏡の奥で目を輝かせる。

 谷川さんは、1999年、埼玉県深谷市生まれ、23歳。親の都合で2歳から海外暮らし。中国上海から米国オハイオ州へ、再び上海へ。転校が多く、引っ越すたびに環境や友達が変わったが、いつも一緒にいてくれるぬいぐるみが自分のそばにある味方だと思えるようになった延長線に今の自分がいる。

 「作品を見た人が自分の子どもの頃に戻った不思議な感覚になるような、あるいは、大人になるにつれて忘れていったあの時の感動や驚嘆をそっと思い出させてくれるような作品づくりを目指しています。作品にふれた人全てが少しでも笑顔になることを常に願っています」とホタテ貝の縁どりに囲まれたチューリップのイラストが描かれたクッションを抱きしめて笑顔になった。現在作品は、日本クラブのWEBギャラリー(https://nippongallery.nipponclub.org/Artists/Details/67)で展示中だ。

(三浦良一記者、写真も)