在米邦人の視点でニュースを伝える

FCIキャスター

久下香織子さん

 ニューヨークのフジ・サンケイ・コミニュケーションズ・インターナショナル・インク(FCI)のキャスターとして活躍中の久下香織子さん。来年米国での日本語放送40周年を迎える同社にあって、1998年から勤務して今年で23年になる同社の押しも押されぬ看板キャスターだ。日本でNHKの報道番組を経てフジテレビに移り98年に来米。平日の月曜から金曜まで放送している朝の番組「FCI News Catch!」をふり出しに、スペースシャトルの打ち上げや、同時多発テロ、ハリケーン取材などで全米を飛び回るジャーナリスト生活を続けてきた。

 現在は、ABCニュースが伝えた一週間のニュースを日本語にまとめ直して解説を加えて伝えるコーナー「Weekly Catch!」のキャスターを務めている。このコーナーは、在米視聴者にとって関心が高いと思われるニュースを毎週金曜日に放送している。日本のニュース番組では扱わないような項目でも、在米邦人にとっては大事な内容であれば取り上げる。そんな生活者視点の報道が日本国内の視聴者にとっても新鮮なのかYouTubeでのヒット数も最近伸びているという。

 昨年から1年半続いているコロナ禍での放送も、当初は自宅からの収録や放送を余儀なくされるなど前代未聞の手探りが続いた。パンデミックにおける日本語放送は、米国、とりわけニューヨークの日本人にとっては、緊急事態宣言や出入国制限、ワクチン接種などの情報を分かりやすい日本語で伝えてもらえるかけがえのないニュースソースであり生命線となっている。

 振り返れば、目の前に流れてきたチャンスは迷わず掴んできた人生だ。小学校からインターナショナルスクールで学んだことから英語は得意で、上智大学時代からサイマルインターナショナルでの同時通訳や企業派遣留学生対象の語学教師をこなし、人に勧められて受けたオーディションではNHKのテレビ番組「中学生日記」の教師役に合格して2年間女優生活、モデルとしても活躍するなど常にスポットライトを浴びてきたキャリアウーマンに見える。が、本人は幼稚園時代の人見知りの強い「夢見る夢子ちゃん」だった頃の思いを心の隅に抱えている。「23年も長く続いているのは、きっと1本1分半のニュースが私に向いているから」と笑う。家庭ではジャーナリスト、フレッド・カタヤマ氏の妻であり9月から高校生になる長男の母でもある。神奈川県出身。(三浦良一記者、写真も)