「公益資本主義」の挑戦 

 公益資本主義を目指す東京円卓会議「富める者だけの資本主義に反旗を翻す」に出席しました。公益資本主義の提唱者の原丈人さんと、慶應大学との共催です。「短期的・投機的な投資家の動きに対して経済社会の持続性をどう確保するか」が主テーマで、経済、金融、ファクトチェックの専門家が講演しました。

 公益資本主義とは「短期的な株主利益の最大化ではなく、企業を社会の公器と捉え、中長期的に公益(社会全体の利益)と企業価値を両立させる資本主義」です。

 旧知の原さんは、慶應大学、スタンフォード大学で学び、シリコンバレーでベンチャーキャピタリストとして成功した実業家であるとともに啓蒙家です。バングラデシュやザンビアなどの経済自立支援や、仲介外交などで私と共感する同志です。

 岸田文雄首相が提唱した「賃金と成長の好循環という新しい資本主義」は公益資本主義がベースと言われ、この日も石破茂前首相や神谷宗幣参政党代表も来賓で出席しました。

 公益資本主義は、1986年に国際MRA(現在の国際IC)のスイスのコーで設立されたコー円卓会議を想起させます。オランダのフィリップス社元会長の提唱で、日本の輸出攻勢に反発した欧米の経営者と日本の経営者が本音で語り合う会議で、私が事務局を務めました。1994年には「企業の行動指針」を策定しました。その理念はキヤノンの賀来龍三郎社長が提唱した「共生」、欧州が提唱した「人間の尊厳」、米国が提唱した「ステークホルダーへの責任」でした。「ステークホルダーへの責任」はハネウェルや3Mなどが提唱し、社員、顧客、地域、環境などを尊重する経営でした。

 しかし、近年の「ステークホルダー経営」は株主利益中心主義で、原さんが警鐘を鳴らしています。賀来さんが唱えた「世界との共生」や「倫理国家構想」は、原さんの唱える「公益」、「倫理」と一致します。

 私は「失った30年検証研究会」の提言策定に関わりました。資本主義の再生に留まらず、「危機管理を含めた世界全体の長期的・戦略的なStatecraft(国家運営)の確立」が提言の柱です。本年は、混乱と分断が増し、倫理崩壊が著しい世界の新しい理念と秩序作りの年とすべきです。そのためにも、公益資本主義を支援して参ります。

 皆さん、本年もよろしくお願いいたします。

ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー(英国在)。慶大卒。国際MRA(現IC)や難民を助ける会等の和解・人道援助活動を経て国会議員、財務副大臣、民主党国際局長、等を歴任。現在、国際IC日本協会長、岐阜女子大特別客員教授も兼任。