上塗りされる歴史と守る歴史
サンタモニカをスタートして10日。砂漠の中の1本道を1日何百キロもひたすら走り、日が暮れたら行き当たりばったりでモーテルに泊まり、いろいろな街を歩き、人と出会い、風景を感じながらのルート66の旅。シカゴまでの全ルートを走破したかったのだが、コンサートがあってニューメキシコから日本に帰らねばならなかった。
なんとも悔しい。中途半端感が否めない。そもそも「ルート66の旅」というテレビ番組なのに、終着点の映像がないのも変な感じがする。それとなく、そんな気持ちを番組のスタッフに伝えると「分かりました。第2弾のメンフィス編はシカゴから撮影を開始しましょう!」と、嬉しい連絡が…。私はコンサートを終えて、シカゴに向かった。
11月のシカゴの朝は想像していたよりもずっと寒かった。スターバックスを見つけると足早に駆け込み、温かいカフェオレを飲みながら撮影の段取りを打ち合わせた。地図によると、まずはお店から歩いて数分というルート66の始発地点を示す標識を探すことにした。
スマホのアプリには「ここ」とあるのに、見つからない。アリゾナやニューメキシコにはあったアーチやお土産屋さんなどもない。女性警察官がたまたま通りかかったので、「警察官なら知っているに違いない」と思って聞いてみても首を傾げて「さぁ〜、知らないわ。そんなサインがあるの?」と逆に聞かれる始末。
「でも、ほら、この交差点に…」とスマホを見せようと、身体の向きを変えた途端、ペタペタと貼られたステッカーに埋もれ「BEGIN HISTORIC 66」の文字がかろうじて見える標識を見つけた。「あった!ほら、見て!」と指さすと、警察官は「こんなところに!初めて見たわ!」と言いながら写メを撮り始めたので、思わず笑いが込み上げた。
ミシガン湖畔にキラキラ光って立ち並ぶスカイスクレイパー、道路の真ん中に作った高架上を電車が走り抜ける…。かつてはルート66で西海岸に向かう人たちで賑わったはずの街に、ルート66のにおいは全くなかった。
セルグのエンジェル・デルカディオさんのように、ルート66の歴史を大事にし、同じ思いをもった人とのつながりを大切にしながら生きる人たちがいる一方、快適性や利便性を求めて文明を進化させ、古い歴史を上塗りしていこうとする人もいる。ルート66の旅は、アメリカの奥深さや人のもつエネルギー、そして多様性の素晴らしさを教えてくれた。今回は走れなかったニューメキシコからシカゴまでのルート66を、いつか旅してみたいと思っている。 (おわり)
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6回にわたり「八神純子が旅するルート66」を読んで下さり、ありがとうございました。11月にはNYのBirdlandでライブがあります。よろしかったら私の歌を聴きに来てください。
(やがみ・じゅんこ、シンガーソングライター、ロサンゼルス在住)

