相続対策は「節税」だけではない

 今回から連載を担当する、一般社団法人日米帰国支援センター代表理事、税理士の内藤です。このコラムでは、日米相続を中心に、帰国前後に知っておきたい日本のお金の問題を分かりやすくご案内します。第1回は「日本の相続」です。相続対策というと節税を思い浮かべがちですが、本来は①納税資金対策②分割・承継対策③節税対策の3つで考える必要があります。

 日本の相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。全国でも約10人に1人が課税対象となり、都市部の不動産や株式を保有する方は、想像以上に評価額が高くなることがあります。米国在住でも、日本に住む親に相続が発生すれば、日本の手続きや相続税と無関係ではありません。

 まず重要なのが納税資金です。日本の相続税は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に金銭で一括納付します。財産の多くが自宅、不動産、株式の場合、納税資金が不足することがあります。誰が相続人となり、財産はいくらあり、税額はいくらになるのかを整理した「相続の健康診断」が出発点です。

 次に分割対策です。生前贈与の偏りや兄弟間の不仲があると、相続時に争いが起きやすくなります。遺留分にも配慮し、遺言や受取人指定を整えておくことが大切です。特に米国資産は、プロベートに時間がかかる場合があります。また、ジョイント口座やジョイントテナンシーは、日本の遺言と異なる承継結果になることもあります。

 節税対策は最後です。生活費や教育費など、非課税で贈与できる方法もありますが、老後資金を減らし過ぎては本末転倒です。

 納税できること、円満に分けられること、そのうえで税負担を抑えること。この順番を守ることが、日米相続では特に重要です。


内藤克(ないとう・かつみ)

一般社団法人・日米帰国支援センター代表理事・税理士。東京税理士会麹町支部所属。ハワイ相続プロジェクト代表。ホノルル商工会議所会員。著書に『残念な相続』(日経プレミアシリーズ)累計5万部ベストセラー。問い合わせは「週刊NY生活を見た」と記載し、Eメール:[email protected]まで。