編集後記
みなさん、こんにちは。海外における日本人子弟教育は、今後どのような状況を迎え、それにどう対応していけばいいか、ということを日本人学校や補習授業校、私立日本人学校などの教育者、保護者を対象とした教育シンポジウムが13日、日本クラブで開催され、70人余りの在留邦人、教育関係者が集まりました。なぜ、今このような話し合いをすることになったのかは、そもそも日本人教育機関に在籍する生徒数が年々減少し、このままでは学校経営そのものが成り立たなくなるのではないかという危機感からです。80年代後半のバブル期には、ニューヨーク地区には補習校3校に約4000人以上の日本人、日系人の子供たちが在籍していました。NY日本人学校も地域との協定で生徒数が450人を超えないようにウエイティングがあったほど日本人児童が多くいたのです。今は補習校はその3分の1、日本人学校もピーク時の3分の1以下でしょうか。
なぜ、日本人児童が減っているか、それは日本国内での児童数の減少に比例し、企業駐在員も、教育負担の少ない若者世帯を中心に赴任させる傾向が顕著だからです。逆に、滞在機関中にこれから当地で子供を出産する、または幼児期を過ごさせるという家庭は多く、学齢期前の日本人幼児の数はかなり増えています。その学齢前児童がすんなり日本人学校や補習校の小学校に入ってくれれば、生徒確保も安泰だが、その前に大体が帰国する。「このままでは学校が存廃の岐路に立たされることになる」。では、どうすればいいか。今までのように、日本帰国後につながる学力の形成と維持、帰国受験を目指す勉強を必要とする子供だけではなく、両親が日本人でも、子供がアメリカ生まれでアメリカの高校、大学へ将来進学し、社会人生活もおそらくアメリカでアメリカ人として生きていくであろう、日本にルーツを持つ日系米人の子供なども広く受け入れられる教育環境の整備が必要ではないかという受け入れ体制変更の必要性に教育現場自身が気付き始めたということだろう。
公益財団法人海外子女教育振興財団がこのほど、海外で補習受講校に通いたくても、地理的な事情で通えない児童生徒を救済する方策として「最後の在外教育機関」(綿引宏行理事長談)としてオンライン補習校を創設して、海外在留邦人子弟の日本語教育と情操教育の向上を図ろうという試みが当日、会場で報告された。ただ、このオンライン授業で、在外日本人教育機関の生徒が増えるわけではない。日本人学校や補習校児童が増えないばかりか、現在通っている補習校を辞めて、オンラインに切り替えるという家庭もでてくる可能性もあり、補習校に通いたくても通えない遠隔地の児童救済にはなるが、既存の教育審議会管轄の全日制日本人学校や補習授業校にとってはあまり恩恵は得られないどころか、生徒が逆に奪われてしまいかねない「両刃の剣」にもなりうる。オンライン教育の現地での運営を担当するのが現地の私立の日本人学校であることも気になる。授業料は無料ではないので生徒数獲得になれば運営を担当する私立の教育機関にとってはビジネスとして有益な話だろう。
最近、ニューヨークの歴史ある私立の日本人学校が相次いで「インターナショナルスクール」と改名した。日本人児童だけでなくこれからは多人種の中での国際教育を目指すという流れだ。日本国内では、インターナショナルスクールは、裕福な家庭の子女が通う良家の学校というようなプレステージが一部地方都市部にあるようだが、日本国内であれば「国際感覚を身につける」という意味では確かにインターナショナルはプラスだが、ここはアメリカだ。元々がインターナショナルな場所で、さらにインターナショナルに進むなら、人一倍頑張ってきたこれまでの日本人教育、日本文化教育が逆に疎かにならないか、薄まらないか心配だ。日本クラブで開催されたシンポジウムは、本紙教育面で報じているが、ここに書いたようなことは特に意見交換はされていない。記事には書けない私の独り言に近い取材後記としてとどめておきたい。それではみなさん良い週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)
