依田寿久60年の画業  第2章「都市の自然」

 1967年からニューヨークを拠点に活動する画家・依田寿久の約60年にわたる創作活動を振り返る展覧会「Continuum, 1967–Today」の第2章「Selected Works, 2000–Today」が、7月9日から8月7日まで新規移転したナウヒア・ギャラリー(リスペナード通り40番地)で開催されている。

 本展は、依田の芸術の変遷を2部構成で紹介する企画。第1章では1990年頃までの幾何学的抽象絵画を中心に展示したのに対し、第2章では2000年代以降の代表作を取り上げる。平面作品から立体的なレリーフへと表現が広がり、植物や拾い集めた素材を取り入れた独自の造形世界が紹介されている。

 制作の転機となったのは、2000年代初頭に家族で訪れたコニーアイランドでの出来事だった。妻・順子が見つけた野生植物カヤツリグサの茎を切り開いた際、三角形の断面に自身の作品との共通性を見いだしたことが、新たな創作の出発点となったという。この「三角形」は、その後20年以上にわたり制作を貫く重要なモチーフとなり、依田が「都市の自然」と呼ぶ、季節や植物、時間の移ろいへの鋭い観察眼を象徴している。依田の執拗に描き続けるプラッシュストロークの原点は、武蔵野美術大学時代の恩師である山口長男教授からの教えにあると画廊ディレクターの戸塚憲太郎氏は解説する。

 1980年に藤枝晃雄構成による「Atr Today ’80」展が東京の西武美術館で開催され、辰野登恵子、根岸芳郎、依田寿久の3人が選ばれて展示され、そこに山口教授が見に来てくれて依田に「君の絵は動きがあっていい」と言った言葉がその後の依田の作品に大きく影響することになる。カヤツリグサの膨大な三角形は見つめているうちに不連動に振動する錯覚を覚える。1940年静岡県生まれ。   

          (三浦良一記者、写真も)