ジョシュア・W・ウォーカー・著
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先ごろ退任を表明したジョシュア・W・ウォーカー・前ジャパン・ソサエティー理事長が、自身最後の公式行事として6月16日、著著『Japan, Beyond the Genkan』の出版記念講演会を行った。今年早々に日本で出版した『同盟の転機』とは異なり、アメリカ人向けに英語で書かれた日本紹介の本であり、日米関係の未来を考える提言の書でもある。国際秩序が大きく揺れ、日米双方が新たな関係を模索する今、本書の刊行は極めて時宜を得ている。
タイトルにある「玄関(Genkan)」は、日本文化を象徴する重要な比喩だ。玄関は外と内を隔てる境界であり、客人を迎え入れ、信頼関係を築く入口でもある。著者は読者を「玄関の向こう側」へと導き、日本を表面的なイメージではなく、その文化や価値観、人と人との結び付きから理解してほしいと語りかける。
ウォーカー氏は北海道札幌市で育った「道産子アメリカ人」であり、日本文化を肌で知る一方、米国務省や国防総省、ユーラシア・グループを経てジャパン・ソサエティー理事長を務めた。本書では外交や研究者としての専門知識だけでなく、自身の人生経験を織り交ぜることで、「インサイダー」と「アウトサイダー」の両方の視点から日本を描き出している。
本書の魅力は、文化論と地政学を無理なく結び付けている点にある。「生きがい」「カイゼン」「社会的調和」といった日本独自の価値観を、単なる文化紹介で終わらせず、日本のソフトパワーや国際社会で果たす役割へと発展させている。日本を世界有数の投資国であり、文化的影響力を持つ存在として位置付け、その強みをどう外交や国際協力に生かすべきかを問いかける。
形而学的な学術書ではなく、個人的体験に根差したした文化人類学的アプローチのその率直さこそが本書の読みやすさにつながっており、専門書では伝わりにくい「日本という国の空気」を生き生きと伝えている。それはまるで日本の開国時に里帰りして日米文化の橋渡し役をしたジョン万次郎のアメリカ版的立ち位置にも似て新鮮だ。今後は米国商工会議所の国際担当として活躍する。「日本人のトモダチがいないと大変な部署なので頑張ります」と語る。
同書は私たち海外で暮らす日本人にとっては「日本をどう説明するか」という問いへのヒントにもなる。日本の魅力はアニメや和食だけではない。社会の信頼、文化の厚み、人々のつながりといった見えにくい価値こそが、これからの日米関係を支える力になる——。そのことを静かにそして丁寧にアメリカ人に伝えてくれている一冊だ。 (三浦)
(写真右)出版記念講演会で花束を受ける著者

