アメリカファーストとジャパンファーストの違い

 7月20日の参議院選挙での議席数は、与党の自民党36、公明党8。野党の立憲民主党22、国民民主党17、参政党14、日本維新の会7などでした。今回選挙の無かった議席を加えると与党122、野党126です。自民党は1955年の結党以来初めて衆参両院で少数与党となりました。しかし、これで政権交代とならないのが、衆議院の小選挙区比例代表並立制という選挙制度です。小選挙区で多くの議席を得た2つの政党以外の政党が比例区で議席を獲得するので、多数の野党が存在し、今回の参議院選でも、それが加速しました。自民党が石破茂総裁か、または新たな新総裁を選び、自公以外の野党と連携して政権を維持する可能性が残るのも多数野党が理由です。

 今回最も注目を浴びたのは、突如14議席を獲得した参政党です。5年以内の新興政党で、賃金の引き上げや外国人労働者の削減、古い既成政党による政治の打破を訴え、SNSを有効活用して若年層の強い支持を得ました。

 欧米のメディアは「日本人ファースト」を掲げた参政党の躍進を、右傾化、反グローバルの潮流、排外主義的などと表現し、トランプ政権の移民規制やポピュリズム政党の台頭が著しい欧州との類似点を強調しています。

 しかし、米国と日本との間には、選挙制度や政治文化等に以下のような大きな違いがあるという認識が必要です。1、米国では登録した選挙人しか投票しないのに対し、日本では18歳上は全員が投票できる。2、米国では、裁判官や官僚などでも自分の支持政党を明確にできるのに対し、日本では「政治的中立」の原則のもと、支持政党などは明らかにできない。3、米国と異なり、日本では会社などで社員は支持政党や、デモなどの政治活動に参加することも公言しない。公言すると、色メガネで見られたり、職を失うこともあり得るからである。4、アメリカファーストの人々には福音派教会の信者やラスト・ベルトの労働者などの岩盤の支持者がいるのに対し、ジャパンファーストの支持者の多くはSNSなどで支持を決めた流動的な支持者が多い。

 参政党への支持が一時的か、それとも政界再編成まで至るのか、注目が必要です。いずれにしても、世界的な変動期を迎えているのは間違いないと思います。

ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー(英国在)。慶大卒。国際MRA(現IC)や難民を助ける会等の和解・人道援助活動を経て国会議員、財務副大臣、民主党国際局長、等を歴任。現在、国際IC日本協会長、岐阜女子大特別客員教授も兼任。