河村武明の芸術魂 NYから世界へ飛び出す

 画家・河村武明(58)のニューヨーク個展「飛び出すアート=枠を超えて(TOBIDASU ART〜Breaking Boundaries)」が5月17日から22日まで、天理文化協会で開催された。 

 1967年徳島県阿南市生まれ。ロックミュージシャンでボーカルだった河村は2001年10月、34歳の時に脳梗塞で倒れ、命はとりとめたものの、発音が困難になる構音障害、聴覚障害に失語症、さらに利き手の右手が麻痺する重い後遺症が残った。

 絶望の中に光を見たのは北野武の映画「HANABI」だった。事件捜査で障害者となった刑事が絵を描くのを見た数か月後、自分でも左手で絵を描き始め、発症から半年後、退院を待たずに京都で路上販売をスタートした。

 その活動が話題となってメディアに取り上げられ、路上デビューから約1年後、2002年髙島屋からのスカウトをきっかけに、全国で定期的に個展を開催するようになる。枠から飛び出すアートは、河村が枠の中に収まらずに飛び出していこうという生き方そのものを表現したものだ。NYのオリジナル作品4作品を含め29点を展示した。取材は妻の育子さん(44)を通した筆談で進んだ。NYでの個展の意味を問うと「挑戦とチャンスを得る世界デビューのきっかけ」=写真=と書いた。今回の個展で作品は、国境という枠を超え、NYから世界へ飛び出すアートになった。(写真・三浦良一)