If Beale Street Could Talk 自由と幸せをこの手に

 1970年代のニューヨーク。人種差別の犠牲になりながらも愛と忍耐と希望で人生を切り開いていく若いカップルを描く物語。人種問題をテーマにした小説を数多く手掛ける作家・詩人で公民権運動家でもあるジェームス・ボールドウィン著の同名小説をベースにアカデミー作品賞受賞作「ムーンライト」の監督・脚本を務めたバリー・ジェンキンスがまたも繊細な詩的描写で全体像を作り上げていく。
 主人公で19歳のティッシュに本作品がメジャー・デビューとなるキキ・レイン。可憐さとしっかりとした意志を併せ持つ快活な少女だ。ティッシュの恋人で22歳の青年フォニーにはステファン・ジェームス。ジェームスは「Race」(16年)のジェシー・オーウェンズ役で高い評価を受け、また、テレビドラマ「Homecoming」でジュリア・ロバーツと共演しゴールデングローブ賞テレビドラマ部門主演男優賞にノミネートされるなど、若手黒人俳優の注目株だ。レイン、ジェームスとも爽やかで初々しい恋人にぴったりのキャスティングだ。
 1974年、ハーレム。ティッシュとフォニーは幼馴染み。家族交流もありそれぞれ勤勉で心優しい若者に成長した。フォニーは木工アーティストで彼の作る一風変わった作品がティッシュは大好きだ。二人は結婚を約束し、新居をさがす。それでなくとも黒人カップルのアパート探しは難しいうえに予算もそれほどない。とあるビルのだだっ広いフロアを案内されてティッシュは戸惑うが、フォニーは想像力豊かに新居のレイアウトを練り始める。フォニーのバイタリティーと前向きな姿勢はティッシュには眩しいほどに頼もしく映る。
 しかし、幸せの絶頂にある二人を襲ったのはフォニーへのレイプの疑いだ。もちろんフォニーはレイプなんてしていない。しかし、地元の白人警官によるねじ曲げられたレイプ事件は真実をかくしたまま独り歩きする。
 偏見と差別が人々の自由と幸せを平然と奪う現実に虚しさを覚えると同時に、状況を見据え最良の選択をすることで新たな人生を見極める若者の強い意志がひしひしと伝ってくる。心に響くパワフルな作品だ。1時間57分。R。(明)

■上映館■
AMC Empire 25
234 W.42nd St.
 Angelika Film Center
18 W.Houston St.
Cinepolis Chelsea
260 W. 23rd St.