クイックUSA アメリカの人事部 コロナウィルス関連(4)

「ポスト・コロナの職場環境」

 今回のコロナ騒動によってポスト・コロナにおいての職場環境、就労における考え方は着実にそして確実に変化したのではないか。
 CA州含めて多くの州で3月中旬からStay at Homeによって自宅にいることが推奨され、3月下旬には全米の90%の地区でStay at Homeとなった。このような状況から、大多数の企業で何らかの在宅勤務を半強制的に認めなければならなくなり、在宅勤務ポリシーを揃える時間も無く開始した企業も多いはずである。
現在のStay at homeは延長があるかもしれないが、近い将来徐々に経済活動が再開され、オフィスへの出勤も開始されるはずである。
*オフィスに戻る際には、以下の実施を検討する必要がある。
1.社内で取り組む安全基準の通知(職場内の清掃、体調がすぐれない従業員への対応、マスク着用の義務等): 安全で健康な職場を提供する措置
2.出社する必要がある職種と必要のない職種の分類: 出社を認める従業員数を限定
3.出社する必要がある従業員への理由説明と通知: 特定のポジションはオフィス勤務が必要な理由を提示
4.社内のデスクの配置(6フィート以上離れているか等)を含む執務環境の見直し:感染を防ぐための執務環境の調整
5.出張規定やその他、ポリシーの見直し: COVID-19の影響で改定をするべきポリシーの見直し
 出社を拒否する従業員が出てきた際の対応も臨機応変に行う必要が出てくるであろう。法律と条令、企業モラルを基に検討をすることが必要であり、対応は簡単なものではないかもしれない。
 安全面を危惧して出社を拒否する従業員には出社理由がビジネス上の判断であることを基に、①なぜ出社が必要か、②どのような取り組みをもって安全な職場を提供するか、③FFCRA等の法的なベネフィットが使用可能か、④継続して休職の提供が可能か等を検討しながら対処を考えるべきである。
 ファーロー中の従業員が失業保険の受給額が高いという理由で復職に難を示す場合も考えられる。
例えばCA州の場合、失業保険の受給資格の一つに、求職中であるという条件があるが、現在はCOVID-19による失業給付急増を受け同条件が一時的に免除されている。これも従業員が復職に難を示す一因となる可能性もある。
一般的にはCOVID-19関連での明確な理由が無い場合(自宅隔離命令やOSHAの安全基準等)、ファーロー従業員の復職拒否は、許可されない場合が多い。各州・都市の状況や順守するべき規則を調べ、対象従業員の見解も踏まえてケースに応じた対応をする必要があるだろう。
 また、今後は在宅で出来る仕事に関しては、在宅勤務の希望があることを前提とした企業運営体制を検討する必要があるかもしれない。
多くの企業が法律で義務付けられていない有給休暇を提供しているように、在宅勤務が当たり前になるのではないだろうか。そしてこの変化を上手く取り入れることが今後の雇用維持・採用競争力に関わりを持つかもしれない。
 在宅勤務を導入する際に短期的な観点から企業が検討するべき点としては、以下が挙げられる:
1.従業員のトレーニング 2.評価制度 3.コミュニケーション方法
 これらに関わるポリシーや方法は、これまでとは異なる運用方法を検討をする必要が出てくる。また従業員側に求められるスキルも変わってくるであろう。従来主にバーバルで行っていたコミュニケーションがテキストベースも多く使用される事で、意思疎通が出来るような読解力や理解力がより求められることになる。
 中長期的な観点から検討をすると、在宅勤務をオファーする企業が増加することで、これまでのようにオフィスの近郊に住む候補者に限定をして人探しを行う必要がなくなり、人材確保はさらに競争が激しくなる可能性がある。併せて、遠隔地にて在宅勤務を行う従業員を雇用するにあたり、以下を検討する必要が伴う。
・一か所に集まることを前提としたベネフィットの見直しを検討
・候補者の就労場所における法律や条令の把握
・雇用条件等のケースバイケース対応の増加
(HR Linqs, Inc. 社長&CEO 榊原 将)
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