服装によって自分を磨く

安積 陽子・著
株式会社PHP研究所・刊

 世界のビジネスエリートが必ず身につける「見た目」の教養。『クラス・アクト』は、格を上げる「身だしなみ」、品性をまとった「装い」、戦略的な「振舞い」を自分のものにしているニューヨークのビジネスピープル、とりわけ男性に焦点を当てた「身なり」についてのアドバイス満載の本だ。
 前著『NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草』(講談社+α新書)よりも格段に内容がレベルアップされただけでなく、手にした時の本自体の重厚感と掲載写真の美的センスの良さ、装丁から、本自体もさらに身だしなみをアップしての登場だ。
 いろいろなことが書かれている。知らないと恥ずかしいルールやワンランクアップのスキルを身につけるためのとっておきのテクニックを体得する、など、目を引く見出しがインデックスに並ぶ。前著では、身だしなみを整えることで、所属する企業や団体の名刺には頼らない、最終的には人一人としての魅力ある人物として国際社会で通じる人間になることが大切であると説いた。
 今回は周りから信頼されながら、自分にとっての「ふさわしい姿」をいかに手に入れるかを具体的に示している。日本人はその人が就いている職業と外見が一致しないことが多いという。米国のように多種多様な人種が入り交じっている社会では、見た目でその人がどんな仕事をしてどの程度の収入を得て、どんな暮らしをしているのかが、身なり服装だけでかなり適格に分かってしまう。
 職業人としての「らしさ」がどこまで身についているか。役職、ポジションらしさ。ビジネスマン、ジャーナリスト、弁護士、医者、教師、音楽家、アーティスト、その人なりのスタイルを持ち、そのスタイルを磨くことが大切であると説いている。自分がしたい恰好や身なりではなく、相手が自分にどんな印象を持つのか、どんな人間に見られたいのかを意識して洋服を選び、着るということに尽きる。ニューヨークのマンハッタンのミッドタウンを昼時歩いていると、この本に書かれていることでウンウンとうなずくことばかり。特に痛感するのは、ビジネスシューズのヒール(踵)。「昨日買いました」といわんばかりの1ミリも摺り減っていないパーフェクトな踵の靴を皆履いている。先日、日本から来た経団連の偉い方々を囲む会があったが、そこに居合わせた日本人駐在員たちの靴もさすがにパーフェクトな踵でピカピカだった。ニューヨークのアメリカ人ビジネスマンで踵のすり減った靴を履いている人は本当にいないのだ。私だけ?(笑)「クラス・アクト」というのは、このアメリカ社会に歴然と存在する階級(クラス)のどこに自分が存在するのかを表現するシグナルと理解。 靴修理屋で踵直してきます。 (三)