強く生きる女性への応援歌
今年のサンダンス映画祭で脚光を浴びた菊地凛子主演の同作は、同映画祭のUSドラマ部門でジョセフ・クボタ・ヴワディカ監督が監督賞を収めた秀作。そんな注目作は、情熱的な社交ダンサーのハル(菊地凛子)を主人公に、彼女の人生の相棒でダンスパートナーのラテン系の男ルイス(アレハンドロ・エッダ)が、突如アマチュア社交ダンスの大会で心臓発作で倒れ、この世を去ってしまう壊滅的な喪失からストーリーが展開する。
ところがそんな全てを失い、絶望的に打ちひしがれたハルこと、ハーちゃんの重い腰を上げさせたのは、彼女のダンス仲間のヒロミ(You)とユキ(吉田洋)で、物静かで保守的なユキは、ハーちゃんの喪失感に寄り添い、精神的な助言をする中、性的に奔放で、平然と悪態をつきまくるヒロミは、新たな男を作ることを勧めるものの、再びハーちゃんの目を輝かせたのは、かつてTV番組「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」で名を馳せたフェディル(アルベルト・ゲラ)が、彼女のダンスインストラクターになったことだ。
ルイスと共に同じラテンの血を引くフェディルの魅惑的なダンスと強い眼差し取り憑かれたハーちゃんは、すでに世界的なダンサーを妻に持つフェディルがオープン・マリッジであることを知り、彼との恋に情熱を注ぐが思いがけぬ出来事が待ち受けていた。
今作の魅力はヴワディカ監督の手腕で、夫の死後にハルが背負う重荷を象徴する人間大の黒い鳥を登場させたり、また「死者の日」を巡る全章のタイトルを日本語で読ませたり、大胆なキャラクター設定や周防正行監督の『Shall we ダンス?』を彷彿させるカメラワークも秀逸。そして映画内では観客の心を揺さぶりながら、時折、心からの笑いを誘う。もっとも注目すべき点は、感情の起伏の激しいハル役を全身全霊で体現した菊地凛子の演技で、彼女が最後に「クランベリーズ」の楽曲「ドリームス」で踊り始める姿は、独立して強く生きる女性たちへの応援歌に仕上げている。(細木信宏)
(写真)菊地凛子(ハル役)Photo by Daniel Satinoff、©Courtesy of Sony Pictures Classic
■上映館■
AMC Empire 25
234 W.42nd St.
AMC Kips Bay 15
570 2nd Ave.
Angelika Film Center & Cafe
18 W. Houston St

