現代的な音楽表現と日本の伝統文化を融合させた音楽公演が19日、マーキン・ホール ・アット・カウフマン・ミュージック・センターで午後と夜に開催された。午後1時30分から、ピアニスト、作曲家、編曲家、YouTubeクリエイターとして活動する菊池亮太のピアノリサイタルが始まった。ジョージ・ガーシュウィンの 「ラプソディ・イン・ブルー」や、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」のほか、会場からのリクエストを取って映画音楽をメドレーで披露した。
演奏会は、日本から世界へ羽ばたく日本人音楽アーティストを紹介する、アーティスト育成・国際的文化交流プロジェクト「MOONRISE」による企画。当日は、ニューヨークで活躍する多くの日本人音楽家たちも観客として来場した。
観客席で演奏を聴いた箏奏家の石榑雅代さんは「やっぱり素晴らしいですね。今の現代に合った感覚を持ってらっしゃる。今どう演奏すれば観客を満足させらるかその要領をよくわかってらっしゃると思った」と話した。同じく箏演奏家の黒澤有美さんは「びっくりしました。今日は友達に誘われて来たのですが、全然想像していたものとは違うし、あれだけあらゆる曲を知っていて、インプロビゼーション(即興演奏)ができて素晴らしいと思いました。あんなに激しく弾いて同じミュージシャンとして指が大丈夫なのかなって心配になりました」と語った。
またオペラ歌手の田村麻子さんは、「びっくりしました。私は彼の存在を知らなかったので、とにかく衝撃的でした。ピアニストとしてのヴィルトゥオーゾ(超絶技巧=聴衆を圧倒する技巧的演奏力)を持っていながら、インプロビゼーションの能力が凄いので、私は、聞いていてピアノの魔術師と呼ばれたフランツ・リストを思い出していました。リストは多分昔こんなふうにサロンで演奏しながら、既存の曲の即興演奏をたくさんしていたんだろうなと思ったので、彼もまたそのように活躍して欲しいなと思いました」と話した。菊池さんは、「初めてのニューヨークですが、演奏していてとて楽しかったです」と演奏後もロビーで大勢の観客に囲まれCDにサインをして会話をしていた。
また同日午後7時からは、ジャズアーティストとしてピアノとトランペットを自在に操る曽根麻央と、津軽三味線奏者・民謡歌手の浅野祥による音楽ユニットMAOSHOのコンサートがあった。NYを拠点に活動するパーカッショニスト、小川慶太がゲストアーティストとして参加した。
バークリー音楽大学を主席で卒業し数々のコンペティションで受賞歴もある曽根麻央と、津軽三味線の世界大会の各級で最年小優勝記録を次々と塗り替え世界で活躍する浅野祥、2人の超絶技巧派ミュージシャンが手を組んだ時、どんなケミストリーが生まれるのか?期待が膨らむなかMAOとSHOがステージに登場し、コンサートが始まった。
イントロの津軽じょんがら節からアメリカの名曲2曲を彼らならではのアレンジで披露。SHOの物凄く激しく速いテクニックで弾く三味線の弦捌きとばち捌きが肉眼でもよく見えて、初っ端から観客は大興奮。そこに負けじと入ってくる、これまた超絶技巧を誇るMAOの激しく美しいピアノの音色。2人がお互い負けじとテクニックの応酬をする様は鬼気迫るものがありながらテクニックをぶつけ合い過ぎてぶち壊すのではなく、音が気持ちよく重なる「競演」であり「共演」でもあり、聴いている方も鳥肌が立つような状態で、観客のハートをがっちりと掴んだ。
実力派トランペッターでもあるMAOは、ある曲では、左手でピアノを弾きながら右手と口でトランペットを吹くというアクロバティックな技も披露した。
コンサートの途中から加わった、NY在住のゲストドラマー&パーカッショニスト小川慶太氏も、何度もグラミー賞を獲得しただけあって「元々この3人でやってるのでは?」と勘違いするほど、高度なテクニックを誇るMAOSHOの2人にしっかり合わせて多彩な音を出していた。3人が醸し出す「音」はプログレッシブロックの巨匠を彷彿とさせた。本編ラストの「八木節」では、観客全員も手拍子を続け、曲に参加し、会場が一体化していた。
演奏後、MAOは、「今回大きな手応えを感じたので、既に次のNY公演のことも考えている」、SHOは「アメリカ人は民謡を今まで聴いたことのない人が多いはずなのに、熱心に聴いてくれて凄く励みになった。すぐにまたニューヨークに戻ってきたい」と語った。


