AIの時代だからこそ心の余白を大切に 中島好美さん

YOHAKU NY FOUNDER & CEO

 中島好美さんは現在、東京を拠点に日本企業に勤める会社員として働きながら、昨年ニューヨークで生け花を軸に、日本酒や食なども掛け合わせながら、ニューヨークで出会う人や場所との対話を通じて、日本文化の新しい楽しみ方や可能性をつくる活動をする会社、YOHAKU NYを立ち上げた。

 「YOHAKU」は生け花における空間の「余白」と、現代を忙しく生きる人が立ち止まり、自分自身や他者と向き合うための「心の余白」を重ねて名付けた。その余白から、対話や気づき、創造性が生まれることを大切にしている。アメリカ人は余白をネガティブスペース(負の空間)と訳すが、生け花では余白を間・余白といった空間を生み出している。生け花は余白を生かし、フラワーアレンジメントは空間を埋めていくと考える。 

 生け花の先生の仕事を手伝っているなかで、グーグル米国本社の幹部来日時に生け花を教える機会があった。その幹部らは、生け花体験に加えて、その背後にある哲学や過去に生け花がどのように始まり、現代に至ったのかの変遷に大きな関心を示した。そのとき、生け花をはじめ、日本の伝統文化など、世界に誇れるものが日本にはまだまだあると可能性を感じたことが起業の動機となった。

 中島さんは、石川県生まれ東京育ち。津田塾大学卒業後、みずほコーポレート銀行に就職。その後、本田技研工業へ移籍。本田で勤務しながら、早稲田大学大学院ビジネススクールを修了。現在も自動車関連会社で、モビリティなど未来の社会をつくる領域に携わっている現役の企業人でもある。その一方で、生け花や日本酒といった日本の伝統文化も学ぶなかで、静岡県に進出した時に地元住民とのコミュニケーション業務に携わる中で、テクノロジーが進化するほど、人間の感性、創造性、文化といった要素の重要性は高まると考えるようになった。 

 「AIが発達する時代だからこそ、正解のない問いに向き合う創造性や、自分自身の感覚を認識する力、他者の異なる価値観を受け入れる力、人と人との対話といった、人間ならではの力を国境を超えて育むことが大切になっていくのではないでしょうか」と話す。  

 ニューヨークでは、ブルックリンの蕎麦処UZUKIを拠点に、生花、日本酒、蕎麦を組み合わせた文化体験を2年ほど前から継続的に開催しており、これまでジャパン・ソサエティーやコロンビア大学、JPモルガンチェースなどでプログラムを実施している。   

 10月1日(木)にブルックリンでYOHAKU NY主催の日本酒とのペアリングディナーも開催する。(18面イベント欄に詳細)。

(三浦良一記者、写真は本人提供)