多くの若者が、夢を抱いて海を渡る。だが、その夢を叶えることができるのは、ほんの一握りの者たちだ。ひとかどの何者かになろうとしてやってきた者たちに待ち受けるのは、線路のない荒涼とした平原だけがただただ目の前に広がっている。地平線の向こうに、必ずや希望峰があると信じて前に進むしかない。
能塚由香さん(33)はその、希望峰に辿り着き、夢を手にした数少ない日本人の一人だ。2025年からディズニーのライオンキングの北米ツアーに出演し、今月20日から6月7日までは、ロードアイランド州で開演する舞台に立つ。幼い頃から踊ることが大好きで、小学3年生くらいで見た東京ディズニーランドに感動して、プロのダンサーになりたいという夢を持った。
18歳でユニバーサルスタジオジャパンのダンサーとなり2012年にニューヨークへ短期留学、帰国後はユニバーサルスタジオジャパンで再びダンサーとして数々のショーに出演した。
2015年に再び留学でニューヨークの名門アルビン・エイリーダンススクールに入学、2年目はスカラシップを受け在籍。その後は、ディズニーとサックス・フィフスのホリデーショーに出演。3回のOビザを更新し、現在アメリカを中心に活動している。
2022年にはナショナルツアー「パリのアメリカ人」と「南太平洋」に出演。23年には「CATS」北米ツアーで白猫のヴィクトリア役で出演。24年フロリダのディズニーワールドのシンデレラ城前で行われるクリスマスショーに出演。昨年からライオンキングの北米公演に出演して活躍するプロのダンサーだ。
ライオンキング出演に至る経緯は「長かったと言えば長い道のりでしたが、アジア人としてここに辿り着いた経緯は早かったとも思います。私はとても恵まれていると思います」と振り返る。オーディションを受け始めたのは2020年から。初めて受けた時、最終審査まで進んで、自分にもいつかはチャンスがあると確信した。だがそれからが長かった。8回目に向けて心を入れ替えていたとき、11月になってキャスティングからオファーが来た。そして、2024年12月末からリハーサルが始まった。
能塚さんの毎日は、ツアーを始めてからは、ホテルとシアターの行き来という日々が続いている。空いた時間は、身体のメンテナンスを受けたりクラスを受けたりまとめてご飯を作ったりの毎日。「今はツアーで各地をまわっていますが、いつかはまたニューヨークに戻って毎日自分のベッドで寝て、そこから仕事でパフォーマンスに行くという生活をしたいです」と話す。積み上げてきた実績がそれを実現させる日が必ず来るに違いない。(三浦良一記者、写真は本人提供)

