妊娠から産後まで家族を支える専門職「ドゥーラ」。ニューヨークでは保険適用の動きも加速し、役割が再注目されている。日本人ドゥーラの先駆け、伊東清恵さんは、産前から分娩、産後の家庭訪問など、10年以上寄り添ってきた。約250の家族を見つめてきた伊東さんが、新たな命を迎える家族に伝えたいこととは何かを聞いた。 (聞き手・川﨑理加、写真も)
ードゥーラとは、一言でどういう人ですか?
伊東:「『家族の伴走者』です。お産では、お母さんを励まし、腰をさするなどします。パートナーの方にも、『ここをさすってください』など声をかけ、ママさんがよければ休憩も勧めます。お産はチームで臨むものなので、その一員にならせてもらっています」
元看護師の伊東さん。日本だけでなく海外でも医療に携わった。中でもエチオピアでは、多くの母子が命を落とす過酷な現状を目の当たりにし、母子保健の重要性を痛感。2012年、夫の転勤で渡ったニューヨークで出会ったのが「ドゥーラ」だった。
伊東: 「妊娠中から産後まで全部に関わる点に惹かれました。実際にトレーニングを受けたら、『これこれ、私がやりたかったこと!』と心が熱くなりました。昔からあった女性たちの出産をサポートする輪の一員になれるのが嬉しかったです」
ー看護師時代との違いは?
伊東:「家族のサイドに立てることです。病院では、患者さんの気持ちに寄り添いたくても『ルールなので』と言わなければいけませんでした。でもドゥーラは、その人の希望にとことん寄り添えます。産前から家に伺い、産後も『どうしてる?』と連絡できます。継続して関われることが醍醐味です。ドゥーラは医療行為をしないので、ただいるだけなのですが、『居て安心した』と言ってもらい、自分の存在価値を感じさせてもらいありがたいです」
当初は日本人からの依頼が多かったが、今は現地の人が大半。その中で価値観の違いも感じるという。
伊東: 「もちろん個性もありますが、現地の方は『こうやりたい!』というこだわりがあります。日本人は『みんなどうしていますか?』とよく聞きます。それでもいいのですが、自分の希望があるなら伝えたらいいと思います。それを言いやすい環境を作るのも私の仕事です」
ー現代ならではの大変さはなんでしょうか?
伊東:「選択肢がありすぎて迷いますよね。情報に流されて、出産も産後も、本当の自分を保つのが難しい時代なのかなと思います」
ーそんな中で伊東さんが心がけていることは?
伊東:「初めはできず苦労しましたが、その人が自分らしくできるよう応援することです。自分らしくいるためには『安心』することが大事だと思うので、安心安全をサポートしているつもりです」
その根底には、十人十色の子育てに共通する想いがある。
伊東:「全てのケースを通して感じているのは、みなさん乗り越える力を持っているので、『大丈夫なんだ』ということです。不安だと言っていた人も立派に出産し、頼りないと言われていたお父さんも産後頑張っています。赤ちゃんは完璧な時に生まれてきます。産後辛かった人も葛藤しながらも素晴らしく育児しています。私が『大丈夫』だという信念を持ってサポートすれば、みなさん安心して子育てができるかなと思います。私は出産経験がないので、関わった皆さんが全て教えて、引っ張ってくれました」
伊東さんは今、「自分らしい出産」を広めるため、新たな挑戦をしている。
伊東:「ドゥーラを養成するトレーナーになるため準備中です。ドゥーラもさまざまで、世の中が多様化する中で相性もあります。使いたい人が使えるようにもっと増やし、認知度を上げていきたいです」
喜びと不安が入り混じる出産と育児。ドゥーラの支えに期待が高まる中、伊東さんは今日も新たな命と家族に伴走している。
(かわさき・りか=元NHKアナウンサー。報道番組や国際放送、インタビューなどを担当。米国出身)

