アートの町、ウッドストックで秋の名残を楽しむ

 ホワイトプレーンズから北へ車で約1時間半、アルスター郡北部に位置するウッドストックはアーティストの町として知られている。19世紀後半に「ハドソンリバー派」の画家たちが集まるようになって以来、さまざまな芸術家や文化人に愛され、1903年にはウッドストック近郊に米国で最も古いアート&クラフトコロニーの1つである「バードクリフ・アートコロニー」が作られた。アート&クラフト運動は産業革命後、工業化が一気に進み、画一化された大量生産が一般化するのに対する形で生まれたもので、「バードクリフ・アートコロニー」はジェーン・バード・マッコールやラルフ・ラドクリフ・ホワイトヘッドら数人のアーティストが絵画、彫刻、金属細工、創作家具や音楽などさまざまなアートが共存するユートピアを目指して始めたコロニーで、120年近くを経た今日も存続、300エーカーの土地に35の建物が建っている。敷地内にはアート&クラフトの作品を売る店や展示会場があり、音楽や朗読のパフォーマンスも行われている。

 ウッドストックと聞いて1969年に開催された伝説のロックコンサート「ウッドストック・フェスティバル」を思い出す人も多いと思うが、実は「ウッドストック」の開催地はウッドストックではない(?)。主催者の若者達はもともとウッドストック近郊で開催するつもりだったが、町に断られたため代替え地を探しまわり、およそ100キロ西の町ベセルにある酪農農場を借りて開催した。そのため正確には「ベセル・フェスティバル」なのだが、コンサートの開催目的はウッドストックにレコーディングスタジオを作るための資金集めだったことと、前述の通り、ウッドストックはアートの町として知られていたため、「ウッドストック・フェスティバル」として開催された。現在、ベセルの会場跡地はイベントやコンサート、アートプログラムを開催するベセル・ウッズ・センター・フォー・アーツとなっている。ところで、漫画「ピーナッツ」に出てくるスヌーピーの親友の黄色い鳥は1967年登場当時は名無しで、ルーシーに「ヌケサク鳥」と呼ばれていたが、1970年にウッドストックという名前がついた。これは前年の「ウッドストック・フェスティバル」にちなんでつけられたもの。

 ウッドストックの町そのものは3階建以上の建物がない小さな田舎町で、メインストリートにはアート&クラフトやインド、チベット系グッズ、ヒッピー風ファッションの店とカフェが並ぶ。週末に開催しているフリーマーケットを冷やかして、ランチを食べて、店を一軒一軒覗いて回って午後4時頃。そのまま日帰りしても良いが、せっかくキャッツキルまで来たのだからB&Bやホテルに1泊してのんびりするも良し。町のあちこちで見かける大小さまざまなピースマークを数えながら、ふと目を上げると秋色に色づいた山々が見えた。初夏の萌えるような緑や冬の雪景色を想像し、なぜウッドストックがアーティストに愛され続けているのか分かったような気がした。


■ウッドストック観光局 https://townwoodstock.digitaltowpath.org:10111/content/Tourism

■フリーマーケット(11月まで開催)www.mowerssaturdayfleamarket.com

■Bethel Woods Center for the Arts https://www.bethelwoodscenter.org/

■Woodstock Byrdcliffe Guild https://www.woodstockguild.org/

□シティから行く場合、メトロノース鉄道ハドソンラインでPoughkeepsieまで行き、

 レンタカーを借りればシティの交通渋滞を避けられる。