折紙アンテナ宇宙で開花

起業家精神を育む

異文化の中で共創する体験重視

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、米国の威信をかけて製造され、バイデン大統領も式典に出席

 西本さんがMBA就学中に気づいた「起業家精神」の定義は、多くの人が考えているような「起業すること」では必ずしもなく、「自分がやることを自分で決めて、オーナーシップを持ってやり遂げる」ことだったという。

 「人から言われたからではなく、自分でやることを自分で決めてやるということ。起業教育で有名なバブソン大学に起業をしたいと思って入学して、卒業する頃には起業しないことにした、という人も実は多い。自分が本当にやりたいこと、やるべきことを見つけて、それを実現する方法を考えたら起業という答えではなく別の方法だったという人や、アントレプレナーとして、企業の中でイノベーションを起こすと決めた人などさまざまだが、ポイントは、起業、就職などは手段であり、やりたい事そのものではないということ。また、周りがするから、言われたから、ではなく自分のやりたいことを自分で決めて、やり遂げること。これを普通に実行出来る日本人がもっと増えれば、日本のイノベーションは増えるはずだ」と話す。

 「日本でイノベーションが起きないのは社会の仕組みに原因があるとか、教育の問題ではないか、とか色々言われていますが、まずは個々人のマインドの醸成、これが大事で、その部分を育てるための、共創の場を作れたらと思っていた」そうだ。

 また、MBAで、距離的に離れたチームメイトとオンラインミーティングでプロジェクトや課題を協働して進めることでもそういった刺激や達成感を得ることができたので、「オンラインだと場所に関係なくコラボレーションの良さを活かせる」と思った。そこで、「異文化の中で共創する過程で、お互いに無いものを学び取る」ことを通じて「日本人に欠けている起業家精神を育てること」につなげられるのでは、という思いが沸き上がり、2014年に活動を始めた。具体的にはハッカソンやビジネスプランコンペなどに、様々な人種やカルチャーのメンバーが混成でチームを作って、プロジェクトを共創する機会を作るということから始めた。オンラインで行えば、さまざまな場所から参加してコラボレーションが出来る。「共創」して最後に「達成感」を味わい、それが自信の一歩に繋がること「これが意識を改革する上でのキーポイントですね」と話す。

「宇宙ヘの探究心さらに深めて」

ハーバード大学天文台主任研究員
ブランドン・アレン氏

 ビノベイティブが取りまとめるNASA ISACには、常に幅広い層の一般の人々が集い、毎年数十人以上がNASAのチャレンジに立ち向かいます。呈示されるチャレンジは48時間という短期間で答えを見つけ出すには難しいものばかりですが、その解決方法の手がかりを垣間見ることができます。私は2014年ISACボストン開始からメンターや審査員として毎年関わっています。今年の役割は審査員としてISACボストンイベントに参加する人々のプロジェクトを評価し、アドバイスとコメントを提供することでした。

 この10年間に渡り、面白い解決提案を数多く評価し、類まれな才能を持つ人々にも出会う機会がありました。プロジェクトを評価する目的は、優秀な提案の選考だけではなくすべての参加者に向上方法をアドバイスすることです。ISACは宇宙技術の機能と可能性そしてその限界を知る機会であるとともに、ここで生まれたアイディアの始まりの場に過ぎないことを強調したいです。参加してくれた方々が宇宙技術やその活用方法などに対する興味を深め、探求していくことを願っています。

 ビノベイティブは、ISACボストン初回開催から国際協力を促しており、ボストン地区だけに止まらず多くの若者のイノベーションマインド向上に貢献しています。毎年アメリカ人と外国人から成るグループが、目覚ましい活躍をしていることがその証拠です。昨年は「Rennaisance Quintet」という日米の若者から成るチーム(アメリカに居住する日本人と日本に居住する日本人で構成)がISAC ボストンのローカル大会で優勝し、グローバル審査へ進みました。彼らのプロジェクトはハードウェア開発とデータ解析を結合する内容で、他の優秀なチームと拮抗した結果、審査員満場一致でボストン大会の優勝を勝ち取りました。グローバル審査において、国際審査特別賞(Global Finalist Honorable Mention)を受賞しました。健闘を讃えるとともに、チームメンバーの今後の活躍を期待したいと思います。