老後は帰国して日本で暮らす

高齢者の住居事情〜これからも「自立した生活」を望む方へ〜

浅井知彦

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◇高齢者の住居探しは大変

 2018年、全国宅地建物取引業協会連合会は、高齢者への賃貸住宅の斡旋に関する調査を行いました。調査の結果、高齢者への斡旋を「積極的に行っている」と回答した事業者はわずか7・6%。「諸条件により判断している」56・1%、「消極的」11・5%、「行っていない」24・8%となり、貸主は高齢者への賃貸住宅斡旋については前向きではないという回答が大半となりました。

◇賃貸か購入か

 賃貸が難しいとなると、マンションあるいは戸建て住宅を「購入」する必要があります。しかし、これも実際にはなかなか難しい決断になります。今の自分の体力がいつまで続くのか、ずっとそこに住み続けられるのか。バリアフリーに改造された住宅といっても、本当に体力が無くなったら住み続けられるかどうか判りません。介護施設などに転居する可能性もゼロではないのですから、「家をどんな形で残すのか」という問題もあります。実際、建築士として「年金世代」の方の家を設計することもありますが、将来のことを考えてどんな家を設計するのが正解か、いつも悩ましい問題となっています。

◇第3の選択肢

 賃貸は選択肢が少なく、購入・所有もやっかいだ…、このようなニーズに応じて増えてきたのが「サービス付き高齢者向け住宅」。その中でも最近、存在感を増してきたのが「高級」で「フルサービス」仕様の高齢者住宅です。これは「高齢者の求めるニーズにすべて応えるために作られた専用住宅」で、イメージとしては「高級マンションの居室」に「ホテル住まいのサービス」と「介護、健康に関する安心」を加えたような住宅です。

 たとえば、神戸にある「サンシティタワー神戸」を例にとると、「神戸中心部に近い立地の35階建てタワーマンション」という立地に加えて、「バーラウンジ付展望レストラン(ルームサービスあり)」「大浴場」「プール、フィットネス」「ライブラリ」「ヘアサロン」などが併設されています。さらに施設内に「クリニック」「介護病棟」などもあり、「高齢者の生活に関する不安」にも対応しています。私も何度か見学に行きましたが「都心のタワーマンション」「快適サービス」「介護・医療」これらすべてを合わせた「新しい住居スタイル」だと感じました。

◇ニーズに合わせた選択肢を

 もちろん、このようなサービスを受けるにはそれなりのコストも掛かります。一般的にサービス付き高齢者向け住宅では、部屋の広さに応じた「終身入居一時金」の他に月々の「管理費」が必要です。また、入居時には審査もありますので、誰でも入居できる訳ではありません。しかし、通常の賃貸と違って契約の更新もありませんし、介護サービスもありますので体が不自由になってもずっとここで生活していくことが可能です。個人的には「後々不動産が残らない」というのも、好ましいポイントだと思っています。

 通常、住宅としての選択肢は「賃貸」「購入」のどちらかになりますが、高齢になってもずっと「自立した生活」を望むのであれば、このような「サービス付き高齢者向け住宅」も選択肢として貰ってもいいかもしれません。

浅井知彦(あさい・ともひこ)1992年東京理科大学理工学部卒業。三菱マテリアル研究所で約10年の研究活動の後、大阪で設計事務所に勤務。2006年5月にレヴォントリ株式会社 一級建築士事務所を設立。約10年に及ぶ建設材料開発の知見、一級建築士としての設計技術をもとにコンクリート住宅の提案を行っています。

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