老後は帰国して日本で暮らす

知っておきたい日本のシニアの住宅事情

司法書士・行政書士 山口里美

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 新しい年の幕開け。コロナ禍は年を越えて継続となりました。

 本日は、これまでに3度も講演をさせていただき、お世話になっているニューヨークの皆様に、日本のシニアの住宅事情をお伝え致します。

 在留邦人の数が最も多いのは「北米」で全体の37%を占めますが、最近、20 〜30代でアメリカに渡り、配偶者の他界をきっかけに生まれ故郷の日本に帰る方が少なくありません。仮に「おひとりさま」になって帰国する際、いったい何が問題となるのでしょうか?

 まず解決しなければならないのは、自分の身元保証をどうするかという問題です。日本に自分名義の家をお持ちの方はよいのですが、とりあえず賃貸住宅を借りて、この先、家を買うか、高齢者住宅に入ろうか検討しようという方は、まず、シニアの1人暮らしは家を貸してもらうことがとても難しいという現実を突きつけられます。預貯金がおありで返済能力に問題がなくても、オーナーはシニアの1人暮らしにはリスクが伴うので貸したがりません。シニア入居OKの物件は一定数ありますが、数が限られているので自分が気に入った環境で気に入った物件に入れるとも限りません。

 将来、高齢者向けの住宅に入る際にも、多くは身元保証人がいなければ契約することができません。長年海外で暮らしてきた方の場合、日本の親族とは疎遠になっていて万一の時の身元保証をしてくれる家族や親族がいないというケースも多いと予想します。できれば帰国前に信頼のおける身元保証会社を探しておく、あるいは情報を得ておかれることを勧め致します。

 次に考えておきたいのは認知症への備えです。厚生労働省の2015年の発表によりますと、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると推計されています。

 日本の金融機関に口座をお持ちの場合、認知症を発症して判断能力が無いとされると、定期預金の解約ができなくなります。不動産をお持ちの場合は、その物件を売ったり、貸したり、大修繕を行うことができなくなります。つまりどれだけたくさんの財産をお持ちであっても、実質的に資産凍結してしまうこととなります。

 資産凍結の備えとして、事前に将来の後見人候補者を予約しておく「任意後見制度」や、自分の信頼する人に財産の管理権だけを先に移転しておく「民事信託」などの仕組みが注目されています。これらの契約は公証人役場というところを利用し締結しますが、いくら法律に明るい方でも個人で契約書を作ることはかなりハードルが高いです。ですから、そのような場合に、すぐに相談できそうな日本の法律家と事前に連携できる体制を構築しておくことも有効な手段となると考えます。

山口里美(やまぐち・さとみ)6年間の旅行会社勤務ののち転業し、1997年事務所開設。現在創業24年目で、女性代表最大の司法書士法人として、総勢100名で日本全国10拠点に展開。「法律業を最高のサービス業へ」のスローガンのもと、依頼者に寄り添ったサービスを展開。著書13冊。講演活動は年間70回以上。

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