在外選挙ネット投票

大統領選混乱でムード後退

 2022年次期参院選において在外投票はネット投票が行われるのではという情報があった。つくば市でシステムの実証実験が成功したので期待されたためだ。今回、海外有権者ネットワーク・日本代表の若尾龍彦氏が、議連の西村智奈美事務局長に連絡して現状を聞いたところ「結果は、前向きだがまだまだクリアすべき諸問題があり、実現には時間がかかりそう」との返事を得た。コロナで一時「人が集まる投票所はやはり危険。ネット投票の早期導入を」という声がネット上でかなりあったが、ここに来て米大統領選での不正投票騒ぎで「やはりネット投票は危ない」という声も多くなっている。在外選挙のインターネット投票はさらに後退したのか。議事録を抜粋しながら、関係者の声を聞いた。

課題なお山積

 海を渡って外から日本を見ると違って見える。

 海外在留邦人は何度もそういう経験をしたでしょう。私達が憲法で保証された国政選挙に参加したいと始まった在外投票実現運動も26年、2007年の最高裁勝訴で実現したが投票率は4%ほど、支援してくれた皆さんもがっかりしました。

 しかし、海外有権者が悪いのではない。現在の投票システムが海外の実情に合わないのです。

 引き続き改善を求めてきた結果、有識者会議も必要性を認めインターネット投票の実証実験が成功しました。

 しかし、サイバーアタック、システム上のトラブル対策のほか、投票結果は政治家にとって最も重要なこと、それらのコンセンサスを得るなど課題はまだまだあります。

 しかし、改善をあきらめてはいけない。インターネット投票が実現し投票率が上がればメディアの注目も上がり、選挙のたびに海外からの視点が国会に届けられます。

 皆さんの応援をよろしくお願いします。(海外有権者ネットワーク・日本代表の若尾龍彦)

相当先に延びた海外で実験導入を

 2020年参議院選からの在外選挙のネット投票導入に関しては、安倍政権後半から少しトーンダウンしてました。今回の参議院総務委員会における答弁もほぼ同じトーンです。高市総務大臣は以前、在外選挙の改正案をまとめたこともあり、同制度改善には比較的積極的ですので期待してます。ただ心配なのは日本の世論のほう。コロナで一時「人が集まる投票所はやはり危険。ネット投票の早期導入を」という声がネット上でかなりあったのですが、ここに来て米大統領選での不正投票騒ぎで「やはりネット投票は危ない」という声が多くなってます。日本国内でのネット投票導入は相当先に延びた印象です。「だからこそ先に在外ネット投票の実験導入を」という流れに持っていきたいです。(竹永浩之/海外有権者ネットワークNY共同代表)

若手専門家登用を
デジタル時代に対応

 今年の米国大統領選挙は投票の正当性が大きな話題になりました。今回の日本政府のインターネット投票に関する見解は妥当だと思われます。日本でも近年IT及びデジタルトランスフォーメーションへの関心が高まっているようですが、まだまだ、それに関わる政治判断は遅いように思われます。

 1980年代後半から急速に民主化を進めている台湾のIT担当大臣は今年で39歳でIT及びデジタルトランスフォーメーションに非常に明るい方だと聞いています。今までなかった全く新しい技術を使っていくには、それに精通した人材をその担当に採用することが重要に思われます。

 新しいことを始める際には必ずリスクがつきものですが、ここは是非前向きに若手の専門家を登用していただきたいと思います。(竹田勝男/海外有権者ネットワークNY共同代表)


在外選挙を日本で審議
ネット投票の現状報告

国会議事録より総務省の答弁

焦点 第201回国会参・総務委員会令和2年5月14日(議事録より抜粋)=1面に関連記事=。

○政府参考人 総務省答弁(原文まま)

  お答えを申し上げます。御指摘のように、現在、私ども総務省の方では、在外投票においてのインターネットの導入ということで、いろいろな課題を整理をしているところでございます。在外インターネット投票の導入に当たりましては、確実な本人確認でございますとか二重投票の防止、あるいは投票の秘密の確保などをシステム上で確実に行うことに加えまして、システムのセキュリティー対策、あるいは新たに必要となる事務フローの検討など多くの課題をクリアする必要があるわけでございます。御指摘のように、私ども、令和元年度、昨年度に、市町村の選挙管理委員会の御協力もいただきながら、投開票システムのプロトタイプを構築をいたしまして実証実験を行ったところでございます。

 実証実験を通じまして、本人確認でありますとか投票データの暗号化などのいわゆる投開票システムの基本的な機能につきましては誤りなく稼働をしたわけでございますけれども、参加をしていただきました実務を担当していただく市町村の選挙管理委員会の方々からは、インターネット投票をする者のシステムへの事前登録、これをどういうふうに円滑に行っていけばいいのか、あるいは、インターネット投票を導入した場合におきましても投票用紙による投票というのが残るわけでございまして、この場合、二重投票というのをどうやって防止をしていくのか、また、ない方が望ましいわけでございますが、仮にトラブルが発生した場合におきましてのサポート体制をどういうふうに考えたらいいのかなどなどについて、運用フロー面での課題について御指摘をいただいておるところでございます。

 在外選挙インターネットの導入に向けましては、こうした課題に対応するほか、選挙争訟が提起された場合どういうふうに対応していくのか、あるいはサイバー攻撃を始めといたしましたシステムのセキュリティー対策など、今回の実証実験の対象とはしていない重要な課題も含めまして引き続き検討を進めていることが必要であるというふうに考えてございます。また、新たな投票方法を導入するということでございますので、選挙制度の根幹に関わることでございますので、各党各会派における御議論も頂戴しないといけないと考えておるところでございます。いずれにいたしましても、在外選挙人の投票環境向上を図ることは大変重要なことでございますので、総務省といたしましては、引き続き着実に検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。