地球温暖化研究ひと筋

文化勲章を伝達

喜びの真鍋さん

 昨年ノーベル賞を受賞したプリンストン大学上級研究員の真鍋淑郎さん(90)に対する文化勲章の伝達式が1日、ニューヨーク総領事公邸で行われた。真鍋さんは、地球温暖化を研究する理論的な基礎の確立に大きく貢献するなど気象学・気候学の分野で世界をリードする業績をあげ、昨年度の文化勲章の受章者に選ばれている。

 森美樹夫総領事が「現在の地球が直面する地球温暖化を物理モデルで説明されるなど、功績に深く敬意を表します」と話し、天皇陛下からの賞状を読み上げ、真鍋さんに勲章をかけた。真鍋さんは「今日の日を両親や兄弟が生きていたらどんなに喜んだことか残念だ。アメリカに渡り、夢中になって研究をやっていると、あっという間に60年以上がたった。文化勲章までもらえるとは夢にも思っていなかった。私は非常にラッキーな人間だと思います」と話した。

 式のあと記者団に真鍋さんは「干ばつの頻度が上がる一方で大雨も増えている。10年に1度の大洪水が毎年起こる。今までのやり方では、もうコントロールできない。日本では大洪水が最大の問題となってくる。これからは治水の対策が必要だ」と警鐘を鳴らした。また、「日本には『好きこそ物の上手なれ』という言葉があるが、若い人には自分の好きな、得意なことをやって、充実した人生を送ってほしい」とアドバイスした。同氏のニックネームも淑郎を短くして「スキ」と同僚から呼ばれていたという。

 同伝達式は昨年予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大や真鍋氏自身の感染から2回延期となっていた。今年の12月に延期になっているノーベル賞受賞式にも体力的な問題から欠席の意向を示した。

(写真)森大使(右)から文化勲章を伝達され笑顔で喜ぶ真鍋さん(写真・三浦良一)