不法移民取り締まり 抗議デモが暴徒化

380人を逮捕
市長、夜間外出禁止令発令

ロサンゼルス市に海兵隊が到着

 カルフォルニア州ロサンゼルス市とその近郊で、6日に始まった不法移民取り締まりに抗議するデモが暴徒化し、各地で警官隊との衝突が起きる中、デモ2日目の7日夜、トランプ大統領は州兵2000人の派遣を決定。8日に第一陣の約300人が到着し、催涙ガスやゴム弾を使用しデモ隊の排除を行なった。ヘグセス国防長官は7日、州兵に加えて連邦軍や海兵隊を派遣すると発表した。

 10日にはトランプ大統領の命令を受け約700人の米海兵隊員が到着、州兵約2100人と合流した。6日からのデモでこの日までに約380人が逮捕された。バス市長は同日、市中心部を対象に緊急事態を宣言し、夜間外出禁止令を発令した。在ロサンゼルス日本総領事館やリトルトーキョー、ドジャースタジアムなども含まれる。ニューサム知事は10日、カルフォルニア州とともに州兵と海兵隊員派遣の緊急差し止めをサンフランシスコの連邦地裁に申し立てた。州兵の指揮権を国防総省から州に戻すよう求めている。ICEに対する抗議デモは10日時点では市中心部とパラマウントやコンプトンなど限定的だが、ニューヨーク市やサンフランシスコ、シカゴ、ワシントン、ダラスとオースティンなどでも起きている。

在留邦人に注意喚起

ロサンゼルス日本総領事館

 在ロサンゼルス日本総領事館は6日、移民関税執行局(ICE)に対する抗議活動に関する注意喚起をホームページなどで呼びかけた。(抜粋・原文まま)

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 6日午後8時30分現在、ロサンゼルス市庁舎及びリトル東京に近い拘置施設周辺で ICEに対する抗議活動が行われていますので、抗議活動に近づくことのないようご注意くださ い。週末においても同様の抗議活動が行われる可能性が排除できないことから、外出の際には最新情報の入手に努め、抗議活動が行われている場所に安易に近づかない等、ご注意くだ さい。ロサンゼルス市警察はこの抗議活動に対して違法集会の宣言を行い、その場に留まる者は逮捕される可能性があると警告を発して抗議活動に対する警備を強化しています。拘置所施設はリトル東京から1ブロック離れた場所にあることから、リトル東京等周辺に滞在されている邦人の皆様におかれては、抗議活動に近づくことのないようご注意ください。お出かけ前には報道等で最新の情報の入手に努め、抗議活動が行われている場所に安易に近づかない等、十分に注意を払ってください。

抗議デモ拡大を各地で警戒

ICE 1日3000人の逮捕を目指す

 1992年の黒人男性ロドニー・キング氏暴行事件を巡るロサンゼルスでの暴動ではウィルソン・カリフォルニア州知事の要請を受けてブッシュ大統領が州兵を投入している。2020年の黒人男性ジョージ・フロイド氏殺害事件での全米各地での抗議デモ鎮圧も各州の知事が要請した形となっている。(1面に記事)

 メキシコと国境を接するカルフォルニア州は民主党の牙城で、移民に寛容な政策を取っていることもあり、住民の3割が外国生まれとされる。そのなかでも住民の4割を外国生まれで占めるロサンゼルス市だが、不法移民取り締まりは1週間で数百人程度に留まっていた。トランプ政権は5月下旬、取締り強化を指示。スティーブン・ミラー副首席補佐官は、移民関税捜査局(ICE)は1日最低3千人の逮捕を目指していると述べた。レストランや小売店などにも捜査対象を広げ、摘発を強化していた。サービス従業員国際組合(SEIU)カリフォルニア支部のデビッド・フエルタ会長も逮捕されたことで抗議デモが拡大。ロサンゼルス中心部にあるメトロポリタン連邦拘置所の周辺では抗議者と連邦捜査官の間で二度目の衝突が発生した。同拘置所は逮捕・拘束された移民が一時収容されている。7日には、ロサンゼルスの中心部から南に約30キロ離れたパラマウントにあるホーム・デポに抗議デモが飛び火。ホーム・デポは日雇い労働を求めて不法移民が集まる場所として知られる。抗議者らはショッピングカートやゴミ箱で道路を閉鎖、警官隊は催涙ガスと閃光弾を使用し排除した。車両が火災を起こし、メキシコ国旗を振り回す者もいた。メトロポリタン連邦拘置所前も再び抗議者で溢れた。パラマウントでは西に隣接するコンプトンにまで拡大した。混乱の中、ジャーナリスト2人が警察のゴム弾で負傷した。8日も抗議行動は続き、自動運転タクシー数台が火をつけられ炎上するなどした。ロサンゼルス市警の幹部は記者会見で「多くの抗議行動は平和的に行われているが、一部がますます暴力的になっており、警察官に向けて、人を殺せるほどの花火を撃ち込む者もいた」と述べた。