民間から公務に転じ日米に貢献

元ジャパン・ソサエティー理事長、元ニューヨーク総領事・大使

櫻井本篤さん

令和3年春の叙勲で旭日中綬章

 日本政府は、4月29日に令和3年春の叙勲受章者を発表し、ニューヨーク日本総領事館管内では櫻井本篤元ジャパン・ソサエティー理事長、元在ニューヨーク日本国総領事館総領事(76)が日米相互理解促進及び日米文化交流に貢献したとして旭日中綬章を受章した。

  櫻井さんは、北米統括兼米国三菱商事社長在任中にニューヨーク日本商工会議所会頭を務め、年次晩餐会などを通じ、対米進出日系企業と米国政財界とのハイレベルな日米友好・協力関係の推進に尽力した。2006年には民間出身初の在ニューヨーク日本国総領事・大使に就任し、38年に及ぶ商社勤務で培った国際経験と豊富な人脈を生かし、大使として日米交流活動に大きく貢献した。その最大の功績の1つは、自らアイデアを持参して日系企業約40社に出向き、直接支援を求めるなど日夜奔走し、ニューヨーク最大の日本関連イベントとして定着したジャパン・デーを立ち上げたことだ。加えて民間で培われた経営感覚を持って総領事館のサービスを改善するとともに、職員の意識改革にも積極的に取り組み、ランチタイムの領事窓口業務の実施など、海外在外公館でも前例のないさまざまな改革を成し遂げた。

 2009年にはジャパン・ソサエティーに初の日本人理事長として就任し、在任中の10年間で、リーマン・ショック後で基金が大幅に減少していた同団体の財務状況を黒字化させることに成功した。その後も日本文化を米国に伝えるという強い使命感の下、超人的な粘り強さとスタミナをもってファンドレイジングとネットワーク構築に尽力し、数多くの文化関連団体がひしめき合うニューヨークで、同団体が一流の組織であり続けることに貢献した。特に東日本大震災直後に立ち上げた「東日本大震災支援金」は、米国の民間非営利団体のなかで最も多い1400万ドル以上の募金を集め、現在までに東北で復興活動を行う45団体69の事業に助成されている。さらに熊本地震、台風19号の被害に際してもリーダーシップを発揮して迅速に支援基金を立ち上げ、災害復興に広く貢献した。

 櫻井さんは「大変名誉なことで喜んでいます。民間企業、総領事館、ジャパンソサエティーとそれぞれ対面する人が違うという異なったフェーズで、どうやったらお客さんに喜んでもらえるのかを考えるのはとても新鮮な体験でした。前にやった仕事が次の仕事に役立つという密接な関係を持っていたことも自分がパブリックサービスとしての仕事を続ける上でよかったです」と叙勲の喜びを話していた。現在は東日本大震災で孤児となった子供達を支援する団体やニューヨークの日本食レストラン協会などのアドバイザーを務めるが、今後はアメリカ社会とアジア系との橋渡し役となる新たな分野にも力を注いでいきたいそうだ。(三浦良一記者、写真は本人提供)