布地に生命与えるセンス

テキスタイルデザイナー   望月祐希さん

 ミッドタウンのファッション・ディストリクトにある米系企業で働くテキスタルデザイナーの望月祐希(もちづき・ゆき)さん。
その雰囲気や話し方から、生み出すデザインの洗練度の高さは容易に想像できる。「競争の激しい世界で秀でるセンスは何?」と尋ねると、少し考えてから「大学では細かく正確と言われたことがある」と極めて謙虚に答える。  望月さんはハワイ生まれ。両親はハワイで仕事をしていて知り合い、望月さんが3歳の時に父親が家業を継ぐために家族で静岡市へ。同じくハワイ生まれの妹は、高校時に米国に戻っって今はハワイ在住。姉である望月さんは明治大学経営学部に進学したものの、やはり米国に戻りたい気持ちが強かった。
 同大を卒業して、いよいよ生まれた国へ。小さい頃から好きだったファッションの仕事をしたいと、2006年からニューヨークに住み、日系企業で働きながら夜学でファッション工科大学へ。テキスタルデザインの魅力と出会い、本格的に学びたいと准士課程へ進んだ。在籍中にインターン生として働いた会社では、デザインが採用されると収入を得られるシステムだった。初めて収入を得たデザインは、アパレル大手「マンゴー」のブラウスのプリント地。「うれしくて、自分でも数枚買い、家族や友達にも配った」と望月さん。この時にデザインが数点選ばれ、テキスタルデザインを生業とする自身がついた。
 キャリアの第一歩は、シカゴにある米系企業。商業用と住宅用のインテリアの布地のデザインを手がける仕事で、仕事は楽しく街も魅力的だったが、自宅と会社との往復で孤独感が大きかった。友人が多いニューヨークに居を移し、今年はハワイで挙式した。現在は主に大量消費型のテーブル用品のデザインを手がけている。  今の仕事の流れは、まずコンセプトイメージをクライアントにビジュアルで伝える「ムードボード」づくり。クライアントの合意を得ると、それに従ってデザインを進めていく。布地はプリント、刺繍、織物などさまざまで、値段を考慮しながら選ぶ。
 趣味は旅行。「世界のさまざまなテキスタルデザインを見たい。新婚旅行がまだなので、モロッコに行く予定」。最近はまっている色はモスグリーン。   (小味かおる、写真も)