ロケッツに今一番近い日本人女性

ミュージカル女優
岩井 麻純さん

 米国でミュージカル女優として活躍する岩井麻純さんは、半年間、リンカーンセンターのオリジナルプロダクション・演出の「王様と私」全米ツアーを終えてニューヨークに帰ってきた。そして早速、クリスマススペクタキュラー、ロケッツのサマーインテンシブのメンバーに選ばれ、1週間の集中インテンシブに参加してきたばかりだ。ショービジネスの殿堂、ニューヨークのラジオシティー・ミュージックホール。ここの売り物が、ロケッツと呼ばれるラインダンスで、クリスマスシーズンに特別公演があり、ニューヨークの年の瀬を告げる風物詩となっている。
 米国中から1000人以上のダンサーがしのぎを削るロケッツのオーディションで、見事フルスカラシップを受けての参加。プレッシャーと戦いながら、ツアーからNYに帰ってきてから1か月半準備していた成果をステージで出し切った。ラジオシティー80年の歴史の中でここのステージに立つことはダンサーの夢の中の夢。今回はそれに一歩近づいたことを意味する。
 名古屋出身の岩井さんは、8歳でジャズダンスを始め、地元の劇団に所属してミュージカルなどの舞台に立ってきた。14歳の時、台湾で行われたユネスコ主催の芸術祭に参加して、初めて海外の舞台を経験した。観客の熱い視線や終わった時の大拍手、言葉や文化を超えた舞台芸術の力に圧倒されて「この世界で生きて行きたい」と思った。
 大阪芸術大学ミュージカル科に在籍中、ニューヨークに遊びに来て見た「ライオンキング」に衝撃を受け「アフリカン・アメリカンが踊るアフリカ作品がこんなにすごいなら、日本人が踊るアジア作品も必ず素晴らしいものになる」と思い身体を鍛えたいと大学卒業後、2015年に来米した。
 昨年10月から今年5月まで「王様と私」の全米ツアーに参加、舞台で王様が英国から来た家庭教師のアナに扇を使ったタイの文化を教えるシーンでダンスを踊った。「アジア人役を演じる上で身のこなしや所作、動きの心が自然に伝わり、アジア人であることを誇りに思えた」という。ひたむきな熱意や飾らない人柄が感じられる。
 90年代に日本人として初めてロケッツの舞台でキックした丸橋節子以来の登壇となるか。いまから先が楽しみだ。(三浦良一記者、写真も)