異なる価値観の中で美を追求する

メイクアップ・アーティスト

塩野目 知世さん

 米国で大手女性雑誌の『VOGUE』『ELLE』や『On』『JINS』『Autry』などでメイクアップ・アーティストとして仕事を手がけ、広告、コマーシャル、イベントでも幅広く精力的に活動中の日本人女性だ。

 ファッションの世界は、現在アジア系モデルの採用が多く、バックグラウンドもLGBTQを大切にする傾向が強いという。クライアントはモデルのイメージで選ぶため、ステレオタイプの綺麗に美しくすればいいでは通じない時代になっている。仕事でニューヨークとパリを往復する。パリではメイクもミニマムなものを要求されることが多くなったのを実感している。世界のモデルたちの肌を通して、時代の今を肌で感じる瞬間でもある。

 こちらで結婚、ご主人ががフランス人のため、フランスの文化やカルチャーに触れる機会が増えた。仕事の内容は主にファッションに関連していることもあり、今後は、活動をヨーロッパにも広げていきたいと思っている。

 東京生まれ、埼玉育ち。高校まで体育会系で、高校はバドミントンのスポーツ特待で入学した。大学でも続ける話があったが、既にメイクアップに興味を抱いていたため、アスリートの道ではなくメイクの道を選び、美容学校へ入学した。卒業後、カラーリストで有名な美容室「kakimoto arms」でヘアカラーリストとして5年間働いた。3年目に、日本のヘアカラーコンテストで入賞、その2年後には夢だったメイクアーティストになるために資生堂SABFAで一年間、フルタイムで学生生活を送り、ヘアメイクの基礎を学んだ。その後、ヘアメイクのアシスタントとして一年間経験を積み、海外で挑戦したいという気持ちが高まり、28歳の時に来米した。英語が全く話せなかったため、一年間猛勉強し、その後メイクアシスタントの仕事を始めて5年後に独立。現在は「Art Department」という米大手事務所に所属している。

 そしてもう一つの大きな目標は、自身のスキンケアのビジネスを始めることだ。モデルやクライアントと近い距離で仕事をすることが多く、肌の悩みに触れることがある。自分自身が肌ケアが好きであり、美容療法やエステなどの経験を積んできたことを活かし、プロメイクアップアーティストとしての技術を一般の人に何か還元できることができればと考えている。

 「女性の美しさに対する願いは一生続くものであり、それを異なる角度から自身の仕事と結びつけ、時代に合った新しいビジネスの提案もしていきたいですね」と話す。内面からの美しさもまた大切に生きている。(三浦良一記者、写真も)

Website: tomomakeup.co  Instagram: @tomoyomakeup