
カーネギーホールで14日夜、日本の伝統芸能「歌舞伎」と「能」を融合した特別公演「An Evening of Traditional Japanese Arts」が行われた。
囃子奏者3兄弟のユニット「三響会」を中心に能と歌舞伎の共演をはじめ、箏、津軽三味線、和太鼓の演奏など多彩なプログラムが組まれた。
圧巻は、「三響会版・獅子」で観世喜正が能の、歌舞伎俳優の中村隼人が歌舞伎の獅子となって海外同一演目で並び立つという前代未聞の舞台を披露し、同大ホール2000席完売の客席からスタンディングオベーションの大喝采を浴びた。(関連記事2面と3面に)
(写真上)カーネギーホールだからこそ実現した能楽師の観世喜正と歌舞伎俳優の中村隼人の舞台共演(写真・三浦良一)
Oh! ワンダフル! 銀座の歌舞伎座がNYに
カーネギーホール日本の伝統芸能の夕べ
中村「厳かな雰囲気大切に」

中村隼人さんは公演前に本紙の取材に対してこう語っていた。
「僕は今回、初ニューヨークなんですけど、公演前に3日間ほど歩いてみて本当に色々な文化に触れることができました。日本の新しいサブカルチャー以外にも、日本には江戸時代から伝わる伝統文化、芸術があるということを見ていただいて楽しんでいただきたいと思っています。自分のこれまでやってきたこと、古典芸能の歌舞伎役者であるということを大事にしつつ今回のお能と歌舞伎のコラボレーション公演という、そういった厳かな雰囲気を大切に努めていきたいですね。今回は「石橋(しゃっきょう)」という歌舞伎の中でも屈指の派手さを持ったものを持って来たので、古典でありながらも、煌びやかさのある作品なのでそれをぜひ楽しんでもらいたいですね」と抱負を述べた。まさにその俳優の体力・技術勝負の演目で、歌舞伎の「派手な踊り」の代表格である能の名作『石橋』を題材にした、華やかで躍動感のある歌舞伎舞踊を舞台で披露し、ラストはスピード感のある連続毛振りで、客席を沸かせた。
当日前半は、黒澤有美の箏、辻勝の和太鼓、津軽三味線の上妻宏光、光輝の演奏が披露され、場内の観客は静寂の中に鳴り響く音と舞台演出に吸い込まれるように聞き入った。会場で観劇したニューヨーク総領事の片平聡大使は「カーネギーホールの音響が本当にすばらしくて皆さんの演奏と舞台を存分に楽しむことができました」と感動していた。 (三浦良一、写真も)




歌舞伎音楽を実演ワークショップで解説

国際交流基金ニューヨーク日本文化センターと在ニューヨーク日本総領事館は共催(協力DーT株式会社、マークリエーション)で、13日スカンジナビアハウスのVictor Borge Hallにおいて、歌舞伎音楽のデモンストレーションとワークショップを開催した。囃子方の田中傅左衛門氏と田中傅次郎氏、歌舞伎俳優の中村隼人氏らが歌舞伎の歴史や音楽、楽器について解説しながら実演を披露した。
その後体験として一人の米国人男性が舞台に上がり、恐る恐る鼓を打つ姿が会場を和ませていた。歌舞伎は見たことがないという米国人からは、和楽器や歌舞伎の化粧についての質問があがり、邦人女性は「滅多にない貴重な機会を得られ、たっぷりと聞かせていただいて幸運であった」と形相を崩し、また来てほしいという声に多くがうなづいていた。満席となった会場には着物姿の女性も見受けられ、銀座の歌舞伎座がそのまま移ってきたような、上質な社交の場を創り上げていた。 (フェイダーちえ)
日本クラブで公演の見どころも

日本クラブは12日夕、「2025秋の芸能イベント」と題し、カーネギーホールで14日に開催の三響會特別公演「An Evening of Traditional Japanese Arts」のプレイベント「伝統芸能への誘い」を開催した。
NHKの時代劇や大河ドラマでも活躍する歌舞伎俳優・中村隼人氏と、総合プロデューサーで歌舞伎囃子方の田中傳次郎氏が登壇。公演の見どころをはじめ、幼少期からの厳しい修行、トルコやサウジアラビアでの公演のエピソードや21日から全米公開される映画『国宝』の話題も語った。中村氏は見得や獅子のポーズは体重のかけ方が重要と実際に披露。田中氏は実際に鼓(つづみ)を演奏し、空気を貫くような鋭い音と迫力ある掛け声に、会場は静まり返った。指名を受けて鼓を叩いた北米三菱商事社長の河手哲雄氏は「叩いても全く音が聞こえなかった。あの響きは長年の鍛錬の賜物」と感嘆していた。1時間の講演後は食事とドリンクとともに懇親レセプションの時間が設けられ、中村氏は多くのファンたちのリクエストに応えて笑顔で写真に収まっていた。 (菊楽恵、写真・高田由起子)

