静かな朝のクオモ、赤い夜のスリワ 40+女の人生

ー政治が街に溶けるニューヨーク

 巨大都市ニューヨークでは、政治が思いがけない場所に姿を現す。新しい市長が決まった今だが、実は2人の候補と投票の前に別々の場所で会話を交わす機会があった。

 朝の静けさの中で語られる政策も、夜のレストランで交わされる街の声も、すべてが都市のエネルギーとして混ざり合っている。

 ニューヨークの魅力のひとつは、政治が「特別な舞台の上だけ」で語られるのではなく、街の日常に自然と溶け込んでいることだ。早朝の会場でも、レストランの雑踏でも、政治はいつも生活の近くにある。

 ある朝、マンハッタンで開かれた小さな朝食会に招かれた。まだ街が完全に目を覚ます前、柔らかな光が差し込む会場に登壇したのは、アンドリュー・クオモ元ニューヨーク州知事。経済、移民政策、治安——語られる話題は幅広く、どの言葉も驚くほど冷静で実務的だった。

 会場の誰かが、「知事から市長になるのは『降格』では?」と冗談交じりに投げかけると、クオモ氏はふっと笑みを浮かべ、こう返した。

 「ニューヨークは、経験者でないと務まらない街だよ」。

 その表情には、「今の候補者の多くはまだ未熟で、この街には自分のような経験が必要なのだ」という静かな自負がにじんでいた。

 朝の光の中で語られるユーモアの裏には、巨大都市を率いてきた者だけが知る独特の重みがあった。

 また別の晩。ローカルのイタリアンレストランに足を運ぶと、賑やかなテーブルの向こうに、ひときわ目立つ赤いベレー帽が見えた。カーティス・スリワ氏(ガーディアン・エンジェルス創設者)だ。

 特別な警備があるわけでもなく、地元の住民と肩を並べながら、治安や地域の未来を語り合う姿は、まさに「街の声」そのものだった。静かな朝の政策論と、夜の赤いベレー帽が放つ熱量。

 二つの対照的な風景のあいだに、ニューヨークという都市の輪郭が浮かび上がってくる。制度や経済を語る合理的な側面と、街角の温度を守ろうとする情熱的な側面。その両方が、この都市の生命力を支えている。

 日本では政治家と一般市民の距離を遠く感じることもあるが、ニューヨークでは違う。カフェでも、地下鉄でも、特別な舞台を用意しなくても、この街では政治が人々の生活に交わり続けている。その近さこそが、世界中の人を惹きつける「ニューヨークらしさ」の一つなのだろう。

 朝のクオモ氏のユーモアも、夜のスリワ氏の赤いベレー帽も——

 そのどちらもが、この都市を形づくる重要なピースであり、ニューヨークに生きる人々の物語の一部なのである。

(写真)スリワ氏(写真左)とクオモ氏と(同右)


藤田カンナ

美容クリニック「Re:forma」と「Kirei House」代表として日本の美の哲学と、米国および世界中から取り入れた先進的な技術を融合させ、心身の調和を重視した総合的な美容と健康ケアを提供。女性の健康をサポートするために開発、Femtechアワードを受賞した幹細胞製品の米国代表。KAATSUスペシャリスト認定資格およびインテグレーティブ・ニュートリション認定ヘルスコーチの資格を持ち、コロンビア大学で学んだビジネスと経営の知識を活かし、事業運営や顧客サービスにおいて、常に最先端のアプローチを追求している。