在外投票を混乱させる衆議院抜き打ち解散

 最近日本では衆議院解散の報道が目立ちます。上院、下院とも決まった時期に行う米国と違い、任期4年の衆議院のはずが約2年半に1回選挙を行っています。近年は抜き打ち解散が多く、海外日本人にとっては立候補者や政策の事前情報不足での選挙突入です。選挙公報も選挙公示後に在外公館に届きます。

 「片道数時間の在外公館や、間に合わない郵便投票」などの障害に加えて、突然の総選挙は在外投票の意欲を損ねてはいませんか?私は米国の政党大会に2度出席しましたが、予備選挙も含め候補者と有権者とが1年近く対話する民主主義に感動しました。近年は劇場型過ぎますが!

84%は首相の裁量による解散

 大統領を直接選ぶ米国と異なり、日本や英国は国会議員が首相を選ぶ「間接民主主義」の国です。国民との距離が離れた首相をチェックするために、国王が議会を解散して民意を問うのが解散の起源です。また三権分立にある政府と国会との相互チェック機能でもあります。

 しかし、日本では政府が圧倒的な力を有し、その首相の政治判断で解散されてきました。憲法69条の内閣不信任決議案による解散は過去4回のみで、21回(84%)は憲法7条による首相の裁量による解散です。

 英国でも首相による解散が多かったため「議員任期固定法」が成立し、下院議員の任期を5年と固定化し、解散を下院の3分の2以上の決議、または不信任決議可決の二つに限定したこともあります。

 日本でも「内閣不信任決議案による解散か、衆議院の3分の2以上の決議を要する解散案」や、「解散日の事前通知を義務付け、通知した日以外の解散を禁じる案」などが出てきています。

首相の4分の3が世襲議員、弱い国会

 それ以上に日本の民主主義を強化する時です。歴代首相の約4分の3、国会議員の30%弱(自民党の約40%)が世襲議員です。この最大の既得権と官僚とのもたれあいが政府の国会に対する優位性の基盤です。

 法案全てを議会が提出する米国に対し、日本では8割を政府が提出します。政府の過大歳出を大幅削減できる米国のGAO(行政活動監査院)などの独立機関を持たないことも弱い国会の実像です。

 こうした欧米諸国が持つ民主主義や議会の強さを日本も持つことが、在外ネット投票導入や国籍法改正などによる海外日本人のサポートにもつながると思います。

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。