編集後記

︎編集後記

 みなさん、こんにちは。ニューヨークの日本人、と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか。「自立した女性」「自分の夢に向かって挑戦する勇気ある者」「海外で事業を成し遂げた成功者」「一流企業のエリート駐在員とその家族」といったところでしょうか。「ニューヨーク」というだけで「世界の文化と経済の中心」という枕詞が付く上に、日本とは比較にならないほど物価の高い、世界中の富裕層がマンハッタンに集中する高層住宅に不動産を所有する「成功者のすごい街」というのが一般的なところでしょうか。


 おそらくそれは「クリーム・オブ・ザ・ソサエティー」と呼ばれる、NY日系社会のほんの一部の氷山の一角、ピラミッドの頂点の先だけの「社会の綺麗な部分」の上澄みだけを見ているのかもしれません。ニューヨーク近郊に約3万7345人(外務省在留邦人統計2024年)が住んでいる日本国籍所有者とその統計には現れない日系米国人のかなりの割合が、日々の生活に四苦八苦している、日本のどこにでも住んでいるごくごく普通の人々かもしれません。


 ニューヨークにある日系社会福祉団体、日米ソーシャルサービス (JASSI、望月良子理事長)は1981年に創立以来福祉サービスを無償で提供しているニューヨーク州の非営利団体です。日常生活をする上で直面する問題から、言語、文化および制度の違いによって生じる複雑な問題まで、支援を必要とする人たちの生活の向上を図ることをミッションに専門教育・訓練を受けた日英バイリンガルスタッフが、守秘義務を守って相談に応じており、年間支援者数は2026年度1,406人に上っています。


 JASSIに支援を求めアンケートに回答した77%の人が低所得から中所得世帯に属し、8割(高齢者は94%)が日本語での支援を必要としています。JASSIに登録している460人のうち、50%以上が一人暮らし。シニアの支援者数は2023年と比べて77%増加しており、今後も早いスピードで増加すると予想されています。1970年代前後に来米した世代がそろそろ90歳台になっていて海外在住者の中でも特に永住者の高齢化が進んでいます。


 今月2日、そのJASSIの創立45周年記念ベネフィット・ディナーがあり、約140人ほどが参加しました。個人参加一人一席400ドル(約6万円)からで、企業で10席1テーブルを購入して参加するところもあり、いわば「支援する側」の人たちのパーティーです。JASSIは、支援を必要としている人からはお金は一切取らずに無料でサービスするため、その財源は政府助成金とこれら日系企業や個人の寄付で支えられています。支援を受けた人の体験談の中に「JASSIは闇夜を照らす灯台のようだ」との感謝のビデオメッセージも紹介されていました。


 支援を受けている人にも、きっと本紙、週刊NY生活を毎週楽しみに読んでくれている愛読者がいるはずです。紙の新聞がいいようです。コロナ禍のとき、日系食料品店の軒先の新聞ラックに手を伸ばして新聞をピックアップしている高齢の男性は「この新聞を手にするとまだ自分は大丈夫なんだって思えるんだよ」と言って微笑んでくれた顔を忘れることができません。JASSIのパーティを取材して、そんな光景が目に浮かびました。フリーペーパーは誰でも手にして読むことができます。本紙もまた、日系社会の読者とスポンサーに支えられて発行を続けています。それではみなさん良い週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)