マドラスチェックとホワイトバックス

イケメン男子 服飾Q&A ケン 青木 71

 暑い日が続いております。週末などオフタイム、この季節、皆様はどのような服装でお過ごしでしょうか。やはりTシャツ、ポロシャツといった軽装が多くなると思います。それはそれで全く問題ないのですが、お昼や夕方にふと「ちょっと一杯」と思われた時、また「洒落たカフェなどで軽めの食事でも」といったシチュエーションの際など、寛ぎつつも季節感があり、ほんの少し洒落た装いをオススメしたいのです。そうした装いの方が必ず思い出に残る「より良いひと時」となるはず、と思うからです。
昨今、機能性を謳った人工繊維の衣料品が増えておりますね。私個人の考えではありますが、人間の身体にはやはり天然、自然の繊維が相性が良いのではないか、と(笑)。
そこで、今回は真夏の今、おススメの装いについて、少し主観的なお話をいたしたく。その一つがマドラス・チェックを用いたシャツやジャケット、スラックス等々なんです。
御存知かと思いますが、「マドラス(Madras)」はインドの都市名で、現在正式名はチェンナイに変わっております。「綿の王国」インド、正式にはIndia Madrasと呼ばれる、植物の天然染料を用い、あえてあまり高級でないと言いますか、むしろ普段着にはちょうど良い品質の綿素材で織られた、主にチェック柄の生地のことを言うのですね。加えてアメリカ生まれの世界的な衣料、ジーンズはインディゴによって染められておりますね。インディゴだからこちらのルーツもまたインド、今でこそ化学染料のインディゴが圧倒的ではありますが、元々天然の深いブルーの染料、植物の藍が元となっており(日本の藍とは品種が違うのですが)、故郷を同じくするマドラスと相性が良くないわけがありません(笑)。
 それで、(1)マドラス・チェックのシャツにジーンズを合わせたり、また(2)半袖のポロ・シャツやボタンダウン・シャツにマドラス・チェックのジャケットを羽織られてみたり、などと。(2)の場合も下に合わせるのはジーンズでいいのですが、同じ綿の仲間ということで、ベージュやホワイトなどの綿のスラックスを合わせてみることにも是非トライされていただきたく。その際、できれば綿のスラックスにクリース、即ち折り目をしっかりと入れていただくと真夏の大人のスッキリ・カジュアルウエアの組み合わせが完成!? いやいや、まだでした(笑)。もう一つ、シメとして 「ホワイト・バックス(White Bucks)」と呼ばれる、白のスウェードでできた紐靴を合わせて完成です!! 紐靴ですが、底材は、ブリックソールなどと呼ばれており、合成ゴムでできています。ホワイトバックス、紳士の夏場の定番靴として、利用範囲はかなり広くなっています。
さて、これにて真夏の大人の、爽やかな「クラシック・サマー・カジュアルドレス」の組み合わせの完成です。マドラスの生地は、1950年代に大流行した当時はジーンズと同様、染料が落ちやすく他の衣料品に移染したりしましたが、今日では改良されて洗濯など取扱いが随分とラクになりました。
さて、「クラシック(classic)」とは古代ローマ時代のラテン語にまで語源を遡る言葉なのですが、その本当の意味は実は「古い、古くさい」ではありません。「最高の」とか「飽きがこない=定番の」というのが本当の意味なのです。ですから、例えばクラシック音楽とは、「人類がクリエートした最高の音楽」というのが正しい意味。紳士服においては「いいね!」と言われているのと同じなんですよ。ですから目指そう、クラシック!!! それではまた次回。
けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス・カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ