イーストビレッジで「赤色エレジー」あがた森魚

CRSが癒しの音楽と共催

 シンガーソングライターとして第一線で55年、アルバムも絶えることなくリリースし続けているあがた森魚さんがこのほど来米し、ニューヨークのイーストビレッジにある教会ミドル・チャーチでソロコンサートを行った。ギター伴奏は髙橋裕。後半はコンサートを共催したCRSと癒しの音楽活動をするサウンド・ヒーリング・サンクチュアリーのサコ・ミヨジとケビン・ナサニエール両氏とのジェムセッションが加わった。

 あがたさんは、「サルビアの花」や「春の嵐の夜の手品師」を歌ったあと稲垣タルホの世界観も語りで披露しながら、1972年の自身のデビュー曲「赤色エレジー」を熱唱した。「赤色エレジー」は、今から半世紀以上も前にアニメーターのような画家を目指して上京した若き幸子と一郎の同棲生活を描いた林静一の漫画で、月刊漫画雑誌「ガロ」に連載された作品。あがたさんはその二人のエレジーな生活に感動してこの曲を作ったという。

 そしてボブ・ディランに憧れて若き日にニューヨークに来たあがたさんは、ニューヨークにも幸子と一郎のような若き日本人の画家やアーテイストたちがいることを知る。当日は、かつてニューヨークで幸子や一郎を地で生きた在留邦人アーティストたちが今もなお健在とばかりに大勢コンサートに詰めかけた。聞き入った人からは「まるで同窓会やね」と言った声も聞かれたほどだ。そしてあがたさんは北海道小樽市で育った少年時代の担任教師、佐藤啓子先生を敬う歌を披露することも忘れなかった。

 あがたさんは「僕がニューヨークにひかれるのは、やはり強くて大きな、錯綜する近代がそこにぎっしりあるからです。僕の感受性では、自分が小学校時代に過ごした小樽の街と同じなのです。近代の栄光と錯綜を強く内包し、それでもそれは、未来への強い希望を秘めていることが強く感じ取れるからです。こんなに魅力的な場所は僕にはそうそうないのです。ですので、今後とも様々なトライをしていきたいです」と語った。

黄昏時のイーストビレッジが、70年代の東京とオーバーラップしたコンサートだった。      (三浦)