死者の99%未接種

それでも止まぬ「反ワクチン」拡散

 ニューヨーク市保健局によると、今年1月1日から6月15日までの間で、入院患者の98・4%(3万7211人中3万6628人)、死亡者の98・8%(8163人中8069人)がワクチン接種を一度もしたことのない人だった。

 全米的に見ても同様で、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は今月5日、テレビインタビューで「6月の死亡者数を調べると、99・2%がワクチン接種をしておらず、約0・8%がワクチン接種をしていた」と述べた。米疾病対策センター(CDC)のここ数か月の暫定データでも、新型コロナ感染症による死者の99・5%がワクチン未接種者だった。また入院中の患者の約97%がワクチン未接種だという。

 しかし、ワクチン接種を拒む人は全米各地で見られる。「副反応が出ても仕事を休めない」など理由はさまざまだが、ワクチンは「効果がない」「不妊になる」「自閉症を引き起こす」などの根拠のないデマがSNS経由で拡散していることが懸念されている。

 英国のNPO「反デジタルヘイトセンター(CCDH)」が調査したところ、拡散された誤情報のうち65%がわずか12の個人と組織によって作られ、拡散されているということが判明した。12人のなかには「反ワクチンセミナー」などを開いて数十万ドルの収入を得ているオハイオ州のシェリー・テンペニー医師や、暗殺された元米司法長官の息子のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏など有名人も含まれる。

 米国では7月に入ってから新型コロナウイルス感染が拡大傾向にあり、7月18日の新規感染者は3万1745人(直近7日間の平均)で、前週から140%増加。ワクチン未接種者の間でデルタ株感染が広がっているのが原因。ニューヨーク市の新規感染者数(同)は7月4日で246人だったが、18日には523人にまで上昇している。陽性率も0・6%未満から1・3%とおよそ倍となっている。今回の感染拡大の原因となっているデルタ株は当初のものより感染力が高いが、ファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソンのいずれもデルタ株にも有効なことが確認されている。

ワクチン接種拒否巡り従業員と軋轢
大統領SNS批判

 コロナウイルス感染拡大の要となっているワクチン接種に関し、SNSを通じて流布するデマを重くみたバイデン米大統領は16日、「彼らは人々を殺している」とSNS運営企業を激しく批判。グーグルが信頼性の高い情報や保健当局の情報を検索結果の上位に表示するとしたり、フェイスブックが保健当局や専門家が否定した情報の投稿は削除するなど、大手IT企業は対策を開始している。

 医療従事者にもワクチン拒否者は存在し、ヒューストンのメゾジスト病院では6月、看護師約100人が病院側のワクチン義務化に反対し提訴。連邦地裁がこれを棄却し病院側を支持したため、接種を拒否した職員153人が辞職または解雇された。病院、高齢者施設、企業などがワクチン義務化を進めており、各地で従業員との軋轢を生んでいる。死者の99%が接種していない。