マイナンバーカードは海外日本人の恩恵が先行

 2024年5月から海外日本人もマイナンバーカード(以下カード)が取得できることを昨年11月の本紙で報告しました。オンラインでの本人確認や行政手続も可能になります。カードの変更や交付期限が切れても帰国せずに手続きができる流れです。またオンラインによるパスポート申請も可能になります。

 しかし、日本国内でカードをめぐる不祥事が後を絶ちません。24年秋の健康保険証との一体化、25年秋の保険証廃止に対する反発が強く、この一体化を「延期ないし廃止すべき」とする人が72%です。

 コンビニでの別人の住民票の発行、マイナ保険証に別人の情報のひも付け、公金受取口座に別人口座の登録などが起きています。マイナ保険証を使える医療機関は3割程度しかなく、マイナ保険証を使える医療機関の65%でトラブルが起きていることも深刻です。米国のソーシャル・セキュリティーカードが、不正や人的間違いが起きないシステムであるのとは大きく異なります。

 私はマイナンバー制度は、米国のような安全弁の効いたシステムにすれば国民の利便性と行政の効率化になると思います。しかし、国内の日本人には恩恵が明らかでなく、むしろ不安と不信を招いています。

 カードを取得すれは2万円がもらえるという「アメ」と、マイナ保険証への一体化という「ムチ」でカード加入を強いたことが原因と言われます。

 現在の保険証に特別問題はないのにマイナ保険証への一体化によって困る患者や医療機関などが続出してます。

 これに対し、海外日本人にとっては、カードによってのみオンラインでの本人確認や行政手続ができるという恩恵があります。在外投票も在外公館との距離、郵便投票の不備などから、ネット投票しか名案がないのと同じです。

 岸田文雄首相は、保険証廃止は「国民の不安の払拭(ふっしょく)が大前提」で、「コロナ対応並みの臨戦態勢で政府横断的に取り組む」と宣言しています。日本の政治責任の不明確さと縦割行政を大改革する時です。

 今はまず、来年4月のカード取得が実現するように声を大にして頂きたいと思います。その次に、日本政府が国内の日本人にも恩恵をもたらすようなマイナンバー制度と安全体制を確立するよう求めて頂きたいと思います。

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。