世界に茶室文化を 茶室建築家 椿邦司

 茶の湯空間を世界へとの思いでスーツケース茶室「禅庵」を発表したのは、2017年8月。東京都主催の「ものづくり匠の技の祭典」でのことでした。このイベントの趣旨は日本の伝統的な匠の技を世界へ広めることにあります。世界中を歩くのであればスーツケースの中に伝統の匠の技を詰め込んでしまおうという発想で生まれた茶室が「禅庵」です。座禅はその昔、お線香で時間を計っておりましたので1本燃え尽きる間が約15分です。この時間に禅の瞑想をするように茶室を組み立て、一服のお茶を点てる。2018年5月には国連本部での「Peace is ・・・」にて禅庵茶会を開きました。その後はパリのエッフェル塔前やサウジアラビアのリアド、中国、台湾等々、世界を巡って禅庵茶会を行っては日本の匠の技と茶道文化を広めています。

 平和の茶室立礼棚「葉々庵」は「ものづくり匠の技の祭典」10周年を記念して昨年発表しました。禅語「葉々起清風」の書(海老原露巌筆)を掲げて、7つの葉形の棚を7大陸に見立て、世界の人々が手を繋なぎ清らかな風が舞い世界に平和の風が吹くように願った立礼棚です。昨年亡くなられた裏千家鵬雲斎千玄室宗匠は「一碗からのピースフルネス」を唱えて平和を祈り一碗の茶を点てて世界中を巡りました。その思いも込めて亭主7人客7人で一度に茶を点てることができる「七客七亭」の平和の茶室「葉々庵」が生まれたのです。

 四畳半茶室の原型は銀閣寺東求堂・同仁斎と言われています。その後侘び茶の祖、村田珠光や武野紹鴎を経て千利休が茶の湯を大成させてからおよそ450年。現存する利休唯一の茶室「待庵」が究極の茶室と言われており、その後もその時代の茶人や数寄者が今日までさまざまな茶室空間を造ってきました。すでに海外にも数々の茶室があります。

 しかし、これから日本の茶道文化を世界に広めて行くのであれば、その土地の材料でその土地の気候風土と歴史を踏まえた「伝統と革新」が融合した茶室が現地の職人によってできてこそ、500年先の未来を見据えた茶道文化、禅の文化の真の発展に繋がるのではないでしょうか?

 いま世界中に抹茶を嗜む文化が広がっています。その次ステージでは確実に茶室空間が広まることを願っております。空間(場)があればそこに文化(心)が生まれます。

椿建築デザイン研究所 

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