東洋と西洋布で縫合

木嶋愛がNY個展

  ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、木嶋愛が、マンハッタンのプロジェクト・アート・スペース(マジソン街99番地8階)で個展を開催している。木嶋は世界中を旅して集めたテキスタイルを丹念にキルティングした作品を制作している。東京で生まれ育った彼女は、幼少期からテキスタイルに魅了されたという。着物、絣、型染めの藍、子供用の絵入り寝具、5年間暮らしたヨーロッパ、インド、アフリカ、トルコの民芸品やビンテージファブリックなどのボキャブラリーを融合させた没入感のある作品を展示している。

 子供向けのテキスタイルを使ったポップな作品の前で木嶋は「キャラクターやポップアイコン、パターンなどの大胆で目を見張るようなイメージが大好きなんです。私の中では、捨てられる社会の中で、特別な歴史的重要性を持っています。消える前に救い出したい。私にとっては、保存する価値のある現代の文化的な芸術品なのです」と話す。

 この作品はアート活動を支援しているジャノメ・アメリカ・インクのミシンを使って丹念に仕上げられている。縫い目が細かくそれ自体が芸術品的仕上がりを作品のインパクトに与えている。どれもこれもが一点ものの切り抜きでコラージュされ、オムニバスな独自の世界を作り出している。

 木嶋はこれまで、アリゾナ州立大学美術館、ウィーン、ミュンヘン、ソウル、ニューヨークで展覧会を開催してきた。シカゴのスクール・オブ・ザ・ビジュアル・アーツとニューヨークのスクール・オブ・ビジュアルアーツで学んだ。

 キュレーターのミッシェル・ワインバーグさんは「伝統クラフトと現代歴史とのマリッジ(結婚)だ。ポジティブなエネルギーを感じる」と語り、同じくキュレーターのレスリー・カービーさんは「情熱的なパッションを感じるアートの新しい発明」と話している。

 ジャノメ・アメリカ・インクの関伸一郎社長は「木嶋さんは古着やペットボトルのキャップなどを使ったSDGsな作品ながら、独特のセンスでそれを感じさせない創作活動と人柄に共感して、彼女を応援しています」と話す。

 展示は8月末まで。開廊時間は月曜から金曜まで午前11時から5時。要予約電話212・271・0664。(三浦)

(写真) 同展のキュレーターであるワインバーグさん(左)とカービーさん(右)と作品の前で談笑する木嶋さん