命ある限り High Life

「ショコラ」(1988年)、「パリ、18区、夜」(94年)で知られるフランス人監督クレール・ドゥニ監督による初の英語作品だ。宇宙を舞台にしたSFスリラーともSFラブストーリーとも言える神秘さをたたえたヒューマンドラマだ。
 ドゥニ監督はキャスティングにこだわることでも知られる。「レット・ザ・サンシャイン・イン」(17年)でコンビを組んだフランス人女優ジュリエット・ビノシュをこの物語のブラックボックス的な役柄で起用したのはトゥニらしい選択だ。ビノシュが内に秘める怪しげな魅力が宇宙という不可解な空間とうまく溶け合う。
 意外性をつくのがロバート・パティンソンの主役抜擢だ。パティンソンといえば「トワイライト」シリーズでブレイクし、ギャラではA級リスト俳優の仲間入りをした人気俳優。しかしその人気を追い風にラブロマンスやアクションなどいわゆるハリウッドのドル箱路線には乗らず、クローネンバーグ監督の「コスモポリス」やサフデイ兄弟監督の「グッド・タイム」など作品のクオリティー重視のキャリアを積み上げている。彼の内面に潜む何か、にドゥニ監督は惹かれたのだろう。本作はフランスの科学研究所に在籍する宇宙物理学者オレリアン・バローの協力を得ている。共演は「サスペリア」(18年)のミア・ゴス、米ラッパー、アンドレ3000ら。
 モンテ(パティンソン)が幼い娘ウィロウをあやしている。ごはんを食べたり、お風呂に入ったりとどこにでも見られる父娘のやり取りだ。周りの様子から宇宙船の中のようだ。ウィロウはまだ「ダ、ダ、ダ」と片言にも満たない音を発するだけだがモンテはそれが可愛くてならない。
 宇宙船には当初、男女9人が生活していた。科学者のディブス(ビノシュ)以外は全員、死刑囚か終身刑の囚人だった。宇宙に新たなエネルギー源を探索するためというのが表向きのミッションで地球帰還後は無罪放免になるという約束の下で彼らは訓練を受けた。しかし、真実は違っていた。ディブスはすべてを知っていたが、科学者の好奇心は恐怖心に勝ったのだった。宇宙のロマンと特殊な環境の中での人間の心理的重圧が交差する。1時間50分。R。(明)

■上映館■
AMC Lincoln Square 13
1998 Broadway
Cinepolis Chelsea
260 W. 23rd St.
Angelika Film Center
18 W.Houston St.