編集後記 12月1日号

みなさん、こんにちは。日本とトルコの友好をテーマにした「世界平和への訴えコンサート」が29日、今夜、カーネギーホールで開催されます。話は、いまから128年前にさかのぼります。1890年9月16日、和歌山県串本町沖で沈没したオスマン帝国(現トルコ)軍艦エルトゥールル号の乗組員69人が地元住民に救助された恩をトルコの国民は忘れておらず、およそ90年後、イラン・イラク戦争が勃発時、イランはホメイニ師によるイスラム原理主義革命でパーレビ体制が崩壊した直後で当時の米国は、イラクを支持して敵対。1985年3月、時の大統領フセインが48時間後上空を通過する航空機をすべて無差別に攻撃すると宣言しました。イランに駐留する外国人たちは脱出を目指してテヘラン空港に殺到。ところが各国が救援機をさし向けるなか、軍事行動のできない日本だけが動けず、救援機を出すことができなかったのです。イラン駐在の日本人には脱出する手段がなく、取り残されました。タイムリミットが迫るなか1機の旅客機が空港に着陸しました。絶望の淵から日本人を救うため、戦火をくぐって迎えに来たのはトルコの旅客機でした。パイロットたちの合言葉は「エルトゥールル号の恩を忘れるな」だったそうです。飛行機は攻撃75分前に離陸、在留邦人216人全員が無事に帰国することができたのです。この人間ドラマに感銘を受けた和歌山県海南市のガス製造販売会社社長でアマチュア音楽家の向山精二さん(72)がコンサートを開催します。向山さんは「道楽です」と笑う。歴史を手繰り寄せ友情を確かめる、すばらしい道楽ではないでしょうか。それではみなさん、よい週末を。(「週刊NY生活」発行人兼CEO三浦良一)