編集後記

編集後記

 みなさん、こんにちは。海外在住の日本人4人が7月10日、在外投票制度が実質的に選挙権を保障していないのは憲法違反として、国を相手取る訴訟を東京地裁に起こしました。原告はドイツ、フランス、オーストラリア、カナダ在住で、昨年の衆院選では郵便投票を利用したものの、投票用紙が選挙管理委員会に期限まで届かず無効となるなど、一票を投じることができなかったと言うのが訴えた理由です。


 在外投票は在外公館での投票と郵便投票の2方式がありますが、郵便投票では投票用紙の請求から返送まで時間を要し、国際郵便事情によっては期限に間に合わないケースが相次いでいます。また、公館投票も、ニューヨークのような大都会近郊に住んでいる人ばかりではなく、世界には領事館まで数百キロ以上移動しなければならない地域も多く、多額の交通費や宿泊費が必要となる場合があるとのこと。


 訴訟では、国が長年にわたり制度改善の立法措置を講じなかった「立法不作為」に対する損害賠償と、海外在住者が特別な負担なく投票できる制度を整備していない現状が違憲であることの確認を求めています。約30年前の在外投票制度創設にも携わり、現在は海外有権者ネットワークNY共同代表として在外インターネット投票の実現を訴える竹永浩之さんは、「目指すのは『投票したい人が投票できる在外投票制度』です。司法と立法の両面から制度改革を進めることが重要」と話します。今週号1面で「一票が届かない」という記事で報じています。


 日本のパスポートを所持している日本人なら、世界のどこに住んでいたとしても、どこまで行っても日本人です。二重課税にならない範囲で納税義務を在住国で果たしていれば、参政する権利もまた主張できるでしょう。ただ、海外在住の日本人の声を代弁する国会議員がいないのです。海外に住んでいる人の不便さ、苦しみは、海外に住んでいる人でないとなかなか実感として湧かないのは仕方がないことかもしれませんが、国会議員が国民の代表なら、海外にいる日本国民の代表は誰なのか。国会議員には全員、地元があります。地元で選挙で選ばれた地方の代表者です。でも、海外有権者には、超党派で考えてくれている日本国内の国会議員はいても、自分ごととして、その思いを国会で声を大にして訴えてくれる議員はいないように感じます、というか、実際にいません。


 海外にはいろんな事情で、国外で暮らしている人が大勢居ます。日本の法律は海外では通用しないので、選挙違反があっても日本の公職選挙法で取り締まることができません。なので、海外での政治活動にも今の法制度では自ずと限界があります。原告が海外在住のままで民事訴訟を起こせるのか、日本の弁護士が起こすと言っているのだから起こせるんでしょうねきっと。海外有権者の一人として成り行きを見守っていきたいですが、小さいながらもメディアの一角を占める媒体としては、政治運動の旗振り役はせずに、あくまで、傍観者として冷静に見ていくというのが正しい立ち位置のように思います。


 誰かが何かを言ったり、したりしたことは書くが、自分から率先して何か行動を起こすということはしないところがメディアの卑怯なところでありずるいところ。しかし、利害に与しないからこそ「他人事」として自由にモノが言える立場の職業と地位にいることを保証されている国で生活できていることは、実は、参政権と同じくらい大切な生きる権利だとも思います。それではみなさん良い週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)