国土安全保障省(DHS)に属する米国市民権・移民局(USCIS)のザック・ケーラー報道官は5月22日、「米国に一時的に滞在している外国人がグリーンカード(永住権)を取得するには、特別な事情がない限り、自国に戻って申請しなければならない」と発表した。これまで親族や雇用主の支援を受ける申請者は、審査期間中も米国内に滞在できるのが一般的だったため、留学生や就労ビザ保持者、米国市民の配偶者らへの影響を懸念する声が巻き起こった。こうしたなか国土安全保障省は5月29日、高度な技能や資格を持つ申請者への影響は限定的になるとの見解を示した。雇用主や移民の間で広がった不安を和らげる狙いがあるとみられる。
国土安全保障省は29日の声明で、先週公表された指針は長年の法律や運用方針を改めて示したものであり、新たな大規模な制度変更ではないと説明した。特に米国経済に利益をもたらす人材や国益に資すると判断される人については、今回の方針による影響はないとしている。一部の申請者については従来通り海外の米大使館や領事館で手続きを行う必要があると説明した。ただし具体的にどのようなケースが対象となるのかについては明らかにしていない。なお、この方針は既にグリーンカードを保有している永住者には影響しないとしている。
2024年に発給されたグリーンカードは約140万件。そのうち約82万件が米国内での「身分調整(Adjustment of Status)」によるものだった。身分調整は、雇用主や米国市民の配偶者・家族のスポンサーを受ける外国人が米国内に滞在したまま永住権を申請できる制度で、多くの申請者が利用している。移民弁護士らによると、当初の市民権・移民局の発表後、トランプ政権が合法的な移民の受け入れを制限しようとしているのではないかと大きな懸念を引き起こし、問い合わせが相次いだという。米国の政策における大きな転換と見なされたわけだが、トランプ政権側は対象が限定的であることを強調し、事実上の軌道修正を図った格好だ。

