鉛筆写実画で広がる交流の場 岡崎久美子さん

鉛筆写実画家

 岡崎久美子さんは、嫁ぎ先の日本の富山県で矯正歯科医師として夫婦で医療現場に携わる一方で、鉛筆画による肖像画制作および日本国内と海外での活動を行っている鉛筆写実画家だ。昨年12月にニューヨーク日系人会(JAA)で、1日限りのワンデイ初個展を開催し、大谷翔平やトム・クルーズなど日米の有名人の肖像画を鉛筆だけで表現した作品を披露し、その緻密なペンシル画の奥深さで来場者を唸らせた。

 今年5月には、ソーホーにあるCooke School and Instituteの支援が必要な学生たちへ鉛筆画の教室を行い、またニュージャージー州バーゲン郡の郡知事執務室手前の展示スペースにて、5月のアジアン月間として大谷翔平選手を描いた肖像画が1か月間展示された。

 幼少期は絵を描くことが好きだったが、2020年にオンライン会議で多くの人の顔が画面に並ぶのを見たことをきっかけに制作を再開し、似顔絵を描き始めたのだという。肖像画を通して人とつながる楽しさを再発見した経験が、現在の活動につながっている。

 現在は2児の母としての生活と医療職を続けながら、地元富山県に拠点を置くリアル鉛筆画の第一人者・古谷振一氏に師事し、「鉛筆画マスター・ナンバー・1」を授与。一番弟子として鉛筆写実画アーティストとして活動中だ。

 これまで日本各地での展示に加え、東京都美術館での女流画家協会展に選出され一般賞候補となったほか、フロリダ州ではペンサコーラ美術館、ウエストフロリダ大学美術学部にて活動を行った。またニューヨークでは、マンハッタンのママサロン、放課後アートクラス、Mama’s Space NY、イーストチェスターのシニアホームなどにて、鉛筆画を通して描く楽しさを共有する活動を紹介。

 日本国内では、丸亀市や岡山市でのアートの場づくりを行い、故郷・東京都板橋区では4人展を主催するなど、地域に根ざした発表と交流の場も広げている。

 岡崎さんが描く鉛筆画は、まるで白黒フィルムの写真のプリントのような陰影と滑らかなグレデーションが見事に表現されていて写真と見紛うほどの緻密さだ。絵が写真に近づくことの意味とは何かを、自身が描き出してきた作品から問われ、絵としての存在価値に意味を自問することもあるという。写真をもとにした肖像画なので、自分で撮影した写真でない限り、他人が撮影した写真、被写体を模倣することになる。依頼主からの写真提供を受けて作品を制作していく方法を探るなど、アートの道を極めるために乗り越えていかなくてはならないハードルもある。

 肖像画は、写真技術が発明される以前の中世に盛んだった貴族の肖像画などが美術館などに並ぶが、AIがさまざまな画像をクリエイトできる今となっては、似ているということのみでそこに芸術性を見出すことはますます難しくなっている。

  岡崎さんは「今後も絵を通して、人と人がつながる場や、描く楽しさが広がる時間を世界に広げていきたいと考えています」と話す。鉛筆画を通したコミュニケーションこそが、制作のモチベーションになっているのだろう。

 (三浦良一記者、写真も)