国際機関にやりがい求めて

邦人職員を増員
2025年まで1000人に

国連職員座談会
(出席者、順不同、敬称略)
川村泰久  日本政府国連次席大使
道券泰充  国連開発計画政策専門官
市川奈緒美 国連児童基金 エグゼクテ ィブ・マネージャー
加川文子  国連フィールド支援局地図班チーフ
山川望  国連管理局内部監査室監査官
田川慶  国連アフリカ特別顧問室プログラム担当官
邦人職員の昇進に期待 川村
日本と国際社会橋渡し 田川
社会的使命に挑戦実感 山川

 国連関係機関に勤務する専門職以上の日本人職員数は2017年12月末現在で850人。このうち部長級のD1レベル以上の幹部職員は84人。日本政府は2025年までに職員数を1000人に増やすことを目標にしている。男女比を見ると女性の比率が61・3%と男性を上回っているが、幹部職員では44%に留まる。最近の傾向として国際機関に応募する日本人の数が少なくなっているという。
 各国が国連に負担している分担金の比率からすれば、国連事務局における日本人職員の好ましい採用数は167人から226人とされているのに対し、17年末時点では79人だった。全体的な日本人職員数の増加や、幹部職員数の増加を可能にするためには、応募する日本人の数を増やすことが今後の課題となっている。
 月例的に川村泰久次席大使主催でやっている中堅・若手邦人職員数名との座談会、ざっくばらんな意見交換会が12月7日午後に川村大使公邸で開催された。

出席したのは5人。道券康充さん(国連開発計画本部政策プログラム支援局・統合と調整支援ユニット政策専門官 危機リエゾンと調整担当)、市川奈緒美さん(国連児童基金本部事務局長室エグゼクティブ・マネージャー)、加川文子さん(国連フィールド支援局情報通信技術部地理情報課・地図班チーフ)、山川望さん(国連管理局内部監査室内部監査部年金基金課・監査官)、田川慶さん(国連アフリカ特別顧問室・調整・アドボカシー・プログラム開発ユニット・プログラム担当官)。  各出席者に国連でのやりがいについて聞いた。

国際社会に貢献を実感 道券
自分らしさを生かせる 市川
常に新しいこと学べる 加

 道券さんは「誰かのために役立っているということが生きがい。ネパールと東チモールの平和構築に携わったが、現地のニーズと本部のリソースを摺り合わせて本部にどのような支援ができるのかや、日本とUNDPとの連携で国際社会で役立っていると思える時に働きがい感じる」という。
 市川さんは「本部のグローバルな視点と現地のローカルな視点とを合わせたグローカルな視点をどう生かすか。帰国子女なのでどこにいても自分らしくいられることを大切にしているが、ていねいさや根回しといった日本人らしさを喜ばれることもあるし、日本人らしくなくても自分らしさで仕事ができる国連は働きやすい」という。
 加川さんは「子供の頃から地図が好きだったので、いまこうして、地理を専門に自分の好きな分野で働けていることと、新しいことを仕事で学べる喜び、世界のどこかで関わった地図が国際社会のどこかでブロックに積み木にひとつのように役立っていると思うとやりがいを感じる」と話す。
 山川さんは「国連に来る前は米系の投資銀行のハゲタカファンドでゴルフコースの買収などをしていた。人間の金欲はきりがなく充足するということがないことを痛感し、自分がやりたいことと企業理念が合致しないと生きがいを感じられないと思った。現在、監査の仕事で内部通報者の保護システムに挑戦してやりがいを感じている」という。
 田川さんは、三菱信託銀行勤務から青年協力隊を経てPKOで、コンゴ・コートジボワール在勤をへて2013年から国連アフリカ特別顧問室勤務。「青年協力隊時代に人間として生きるということはどういうことかを体験し、現在はアフリカ会議のお手伝いをして日本の考えを橋渡ししたりすることでやりがいを感じている」そうだ。
 これから国連入りを目指そうとしている人たちからみて「天井人」のような「事務総長」や「事務次長」といった高官でなく、「経験や志」を共有できるような比較的「手の届く」人たちからの助言は有益だ。
 当日国連職員と率直な意見交換ができたという川村大使は次のように語る。「座談会では、国連が求める人材については、地理情報など黙々と仕事をこなすようなものもあれば、女性へのハラスメント問題対応能力を求められるものもあり、さらには国連事務総長の新たな技術戦略や金融イノベーション対応の即戦力が必要とされているところもある、などが報告された。国連で働くことについて『華々しく国際会議で発言して議事をリードする』とか『途上国の過酷なフィールドで難民支援をする』といった画一的なイメージで見て最初から応募を諦めることなく、国連には実に多種多様なニーズが存在しているので、自身の関心や適性に応じて積極的にチャレンジしていくことの重要性を痛感した」と話す。
 このほか国連の仕事の多様性について日本政府国連代表部と国連に関心を持つ日本人ともっと情報を共有していくことが重要との声や、欧米諸国のやり方に倣い、日本人も国連ボランティアとしてまずフィールドに入り、その後のキャリアにつなげていくことがよいとといった提言もあった.。

邦人職員数の推移