悪夢から覚めるとき Destroyer

 ロサンゼルスを舞台にしたニコール・キッドマン主演の犯罪スリラー。キッドマンにしては珍しい汚れ役でメイク一つでここまで変わるか、というほどの変貌ぶり。過去を引きずり退廃的な生活から抜け出せない女性刑事がある事件を機に自分の犯した罪にけじめをつけるネオノワール的作品だ。
 キッドマンは11月公開の「Boy Erased」で高い評価を受け、人気テレビドラマ「Big Little Lies」ではエミー賞を受賞するなど50歳を過ぎても相変わらずの活躍。本作でもゴールデングローブ主演女優賞にノミネートされている。
 監督は日本人を父に持つ女性監督カリン・クサマ。「ガールファイト」(2000年)でサンダンス映画祭グランプリ(審査員大賞)をはじめ数々の賞を受賞し注目を浴びた。カルトクラシックとなっている「ジェニファーズ・ボディ」(09年)や「インビテーション」(15年)などホラーフィルムも得意ジャンルだ。女性の視点でとらえる作品に力を入れる。キッドマンはハリウッドには女性監督が少なすぎると自らの支援を公言しており、本作への意気込みがうかがえる。
 共演は「キャプテン・アメリカ」シリーズのバッキー・バーンズで知られるセバスチャン・スタン、トビー・ケベルら。脚本はクサマの夫で「イーオン・フラックス」(05年)、「Clash of the Titans」(タイタンの戦い、10年)などを手掛けたフィル・ヘイが共同執筆している。
 ロサンゼルス市警のルーキーだったエリン(キッドマン)は潜入捜査を命じられる。ロス郊外で銀行強盗、麻薬の密売などを繰り返すギャングに近づき証拠を押さえる任務だ。FBI捜査官クリス(スタン)とカップルを装い、まんまとグループの仲間になることができた。しかし、もう少しというところでリーダー格のサイラス(ケベル)らに逃げられた。しかもエリンのパートナー、クリスの命を奪って。
 それから16年、エリンは生きる屍(しかばね)のようになった。酒をあおり、寝ずの張り込みで自分を痛めつける。ある日、不可解な殺人事件が起こり、それを機にエリンは今度こそ自分の過去と向き合おうと決心する。愛する者と自分への償いを込めて。2時間3分。R。      (明)

■上映館■
Angelika Film Center
18 W.Houston St.
The Landmark At 57 West
657 West 57th St.
at 12th Avenue