留学生ビザなど短縮 報道関係者は240日

中国人には厳格措置

米国土安全保障省

 米国土安全保障省(DHS)は8月27日、留学生向けのFビザ、交流訪問者向けのJビザ、外国メディア関係者向けのIビザについて、「滞在期間を固定制に変更する」新たな規制案を公表した。これまで学籍・雇用期間などに応じて柔軟に滞在可能としていた「ステータス有効期間」方式を廃止し、上限付きの滞在に改める。

 具体的には、FビザおよびJビザは最長4年間、Iビザは国籍別に制限され、一般の外国人報道関係者は240日で、中国国籍者は90日までとする。延長申請は可能としているが現時点で詳細は不明だ。

 国土安全保障省は声明で、歴代政権下で外国人留学生らに「事実上無制限」に滞在を許すケースがあったと主張、ビザの有効期間を制限することで、ビザの乱用を阻止し、審査や監視の能力を向上させると説明している。導入に際して30日間のパブリックコメント(意見公募)期間を設定し、関係機関や国民からの意見を募り、導入に向けた手続きを進めるとしている。

 今回の動きはトランプ政権下における外国人への監視機能の強化を狙ったもので、6月には、F、Jビザ申請者に対してソーシャルメディアのアカウントを「公開」に設定させ、審査官がオンライン上での活動を確認できるようにする措置が導入された。このほか、過去の発言や思想傾向、例えば反米的・テロ支援と見なされかねない内容があったとしてビザを取り消すケースも複数確認されている。

 中国人留学生・研究者に対しては、ビザの審査強化がより厳格化される別の政策も進められており、今年5月、ルビオ国務長官は、中国および香港の学生に対し、特に中国共産党との関係や戦略的分野(AI、量子コンピューティングなど)で学ぶ者にはビザを「攻撃的に取り消す」用意があり、今後のビザ申請においても厳格な審査基準を適用する方針を示した。

 こうした外国人への監視機能の強化については、教育機関・報道機関・交流組織から「国際交流や学術活動の阻害になる」「言論・学問の自由への侵害だ」との懸念が出ている。

報道ビザ制限今回が2度目

前回はバイデン政権が撤回

 前回、米国政府が報道ビザを240日に制限したのは第1次トランプ政権下の2020年9月24日。今回が2回目だが、前回はバイデン政権が撤回している。当時も今回と同じ提案(プロポーザル )として発表された。今回詳しいことは分かっていないが、前回は、報道ビザは米国土安全保障省および米国務省の方針と一致する外国メディア組織を定義し、適格な審査基準を設けるとしていた。

 また今回も前回同様、30日間のパブリックコメント(一般からの意見公募)を受け付けているため、在米日本報道関係企業が前回同様に意見を集約して米国側に意見を提出する方向で動いている。

報道ビザ240日制限、日系報道機関が意見書

パブリックコメント30日以内に受け付け、5年前にも苦い経験

 前回、米国政府が報道ビザを240日に制限したのは第1次トランプ政権下の2020年9月24日。以来2度目だが、前回はバイデン政権が撤回している。今回も前回同様、30日間のパブリックコメント(一般からの意見)を受け付けているため、在米日本報道関係企業が前回同様に意見を集約して米国側に提出する方向で動いている。

 関係者の話によると、日本新聞協会や民放連が在米日系報道機関からの意見を今月20日までにまとめるという。しかし米国の移民制度、ビザ発給については治外法権で米国以外の国が口を出せる問題ではない上、日本の報道機関だけを狙い打ちした措置ではないため、在米邦人や日本の報道機関・企業だけが不利益を被ったり差別を受けていたりする時に日本政府や在外公館が邦人援護の立場から介入するようなわけには行かないのが現状。そのため、パブリックコメントは在米日系報道機関の声を集約して出されるものとみられる。関税措置で見せた朝令暮改で方針がコロコロと変わることも予想され、予断を許さないが、日系報道機関のある幹部は「今回が2度目で、前回撤回になったことを分かった上で今回また出してきているので、大統領の任期もまだ3年あるため前回のような政権交代での撤回が望めない。240日を超えて更新できるとはいえ、何回更新できるのかも分からない。実際に1年未満の滞在となれば、アパートの契約や子供の修学にも影響が出そうだ」と困惑した表情を見せていた。

 第1次トランプ政権時に日本関係で最も深刻な影響を受けたのがレストラン、特に寿司店だった。寿司職人は、日本の食文化を守り伝えるという背景を元にビザの取得が容易だったが、「寿司を握るのは日本人でなくても寿司学校で習えばできるはず」との理由でビザが取れなくなり、日本人寿司職人を看板にした老舗寿司店が閉店に追い込まれた例もあった。「その職業は日本人でなくてはならないのか、そうでないなら米国人を雇え」という論理なら、今回の報道ビザの制限は安全保障上の問題に加え米国人雇用増大の要素が上乗せされ、制限理由の下支えとなる懸念もありそうだ。